ポスターセッション F

家庭ネコの普及におけるキャットショーの役割に関する日米比較

室伏 誠(日大短(三島)、静岡県)・小泉かよ子(CFAジャパンリジョンディレクター、神奈川県)


 “「キャットショー」という催し物はどの様なものかご存じですか?”と質問すると、多くの人はいろいろな品種のネコを展示してある「猫展」のようなものじゃないですか、というような返事が返ってくる。ネコに興味を持っている人やネコ好きの人は、最近増えてきているネコに関する月刊誌やインターネット情報、あるいはニュースや直接キャットショーに行ったことがあるなどで内容を知っている人も多くなってきた。しかし、猫を飼っている人の数に比べれば、「キャットショー」は我が国ではまだまだ普及していない様に思える。昔のネコの本などを開くと、「猫の品評会」などと書かれたデパートなどで行われたキャットショーの写真が紹介されていることがある。猫は飼っているものの、ペディグリーキャットなどというものには無縁であった愛猫家が多かったようである。
 キャットショーが行われるようになったのは1896年、イギリスの猫協会においてネコの血統登録が始まってだいぶたってからである。これまで、欧米を中心に種々の愛猫協会が創設された。中でも、米国のニュージャージー州に本部を置くCFA(Cat Fanciers Association)は、他の全ての愛猫協会をあわせたよりも大きな世界最大の団体として、ペディグリーキャットの登録や各品種の基準(スタンダード)の確立などを主な業務とする非営利組織である。今日では、ネコに関する啓蒙や学術研究、さらには種々のボランティア活動などさまざまな分野でネコに関する活動の中心的役割を果たしている。現在CFAは、米国を1から7までの地区(リジョン)に区分し、第8番目のリジョンとして日本が加わり、さらにハワイや世界各国・各地域をインターナショナル区域として包括している。
 CFAに統括される業務のうち、「キャットショー」は個体の持つ優秀さを競う競技的要素を持った催し物として、ネコの品種の質的向上を目的としている。いずれの地域、国においても同じ基準でライセンスを持つジャッジ(審査員)によって、ペディグリーキャットや家庭ネコの優秀さを審査する催し物が開催されている。特に米国では愛猫家だけでなくネコに興味を持つ人たち多数が参加して大きなイベントとして、毎週末それぞれのリジョンで開催されている。人生の良きパートナーとしてのネコとの接点がそこにある。我が国においても十数年前にCFAの8番目のリジョンとして承認されて以後、ショーの開催が活発となり、今日ではほぼ毎週末東京や大阪などを中心に開催されるようになった。
 この様にキャットショーが我が国においても活発に行われるようになり、これまでごく一部の愛猫家によって飼われていた我が国ではまだ珍しいネコの品種も、次第に普及してきた。ペディグリードックが全体の50%以上を占める中、ペディグリーキャットは新しい愛猫家が年々増加しているが、まだ全体の15%程度である。今後さらに増加を示すことが予想されるペディグリーキャットの普及に、米国で見られるようにキャットショーが健全に関わっていくにはどの様にしたらよいかを日米それぞれの特性を含め検討する。
2003 HARs 学術大会
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