3.21 一般口演 J

エンリッチメント大賞の応募結果について
―市民と動物園をつなぐ試み―

大橋民恵、赤見理恵、落合知美

市民ZOOネットワーク、東京都


<はじめに>
 市民ZOOネットワークは、“動物園を通して人と動物の関係を考える”をテーマに、セミナーやワークショップ、コンサルティングなど、動物園に関わる様々な活動を展開しているNPOである。2002年度には、市民一人一人が動物園を「理解し、評価し、支える」しくみを実現することを目指し、「エンリッチメント大賞」を創設した。本報告では、企画の詳細について説明するとともに、実際の応募内容について紹介したい。
<方法>
 「エンリッチメント大賞」についての告知は、全国約220の動物園水族館への資料郵送とポスター掲示、新聞、ホームページ、ラジオなどを介しておこなった。募集期間は、2002年4月1日から10月31日の6ヶ月である。募集は、飼育動物や来園者への工夫や配慮(エンリッチメント)をしている飼育担当者や園館を「飼育担当者部門」「飼育施設部門」「来園者施設部門」の3部門で受け付けた。大賞は4名の審査委員による選考を経て決定され、表彰される。
<結果>
 応募総数は64件であり、北海道から九州まで日本全国からの応募が見られた。部門別の内訳では、飼育担当者部門24件、飼育施設部門16件、来園者施設部門24件であった。地区別では、北海道地区33件、関東地区13件、中部地区6件、関西地区2件、中国四国地区7件、九州地区3件で、一番多く応募があったのは、園全体でエンリッチメントに取り組んでいる北海道旭川市の旭山動物園で、26件もの応募があった。
<考察>
 今年度から始まった、各方面への公報や告知がスムーズだったとはいえないが、ポスターの掲示してくれたり、飼育担当者へ応募を促してくれたりと、各園館の積極的な協力を得ることができた。応募内容としては、飼育動物の生態や来園者の視点に配慮したユニークな取り組みを評価するものが多く、非常に高いレベルでの審査となった。応募にあたっては、飼育個体の行動を観察したり、飼育施設をチェックすることが不可欠であるため、市民が動物園を改めて見直すきっかけを提供できたと思われる。今後、表彰や審査結果の報告を各方面に向けて積極的におこない、市民への認知をより高めるとともに、今回の結果を来年度に活かし、市民と動物園をつなぐプログラムとして定着させていきたい。

 

2003 HARs 学術大会
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