3.22 一般口演 B

障害者乗馬における在来馬4種の有用性について

今野直人 太田光明

麻布大学動物人間関係学研究室・神奈川県


1. はじめに
 近年、国内外で障害者乗馬、乗馬療法など、馬を使用した介在活動・療法が注目されるようになってきている。日本においても各方面で活動が続けられているが、障害者乗馬に適した馬の不足が、その普及を妨げている原因の一つと考えられている。
一方で、在来馬は戦後の近代化により役割を失い、絶滅の危機に瀕している。多くの在来馬は気質がおとなしく、飼育が容易で日本の風土に適している等の特性を持っており、騎乗時の反動も少なく、体高的にも使いやすいことから、障害者乗馬への適性が高いと言われている。
 そこで、本研究では北海道和種馬、木曽馬、野間馬、および与那国馬の4種の在来馬に注目し、平常時における血中カテコールアミン濃度から、障害者乗馬に適した馬の条件とされる「おちつき」を評価し、また加速度の測定から「揺れ」の解析を行い、在来馬の障害者乗馬への適性を検討した。

2. 方法
【実験1】カテコールアミン分析
馬はそれぞれ安静状態で、頸静脈より7ccの血液を採取し、血漿部分を冷凍保存した。血中濃度は、高速液体クロマトグラフィーを用い分離、測定した。
【実験2】加速度分析
日本光電製加速度センサーを鞍の前橋に取り付け装鞍した。また、騎乗者の揺れも解析するため、騎乗者のみぞおちにセンサーを取り付け、無線による計測を行った。馬は半径15mの円周上を動き、非騎乗時の常歩・速歩、騎乗時の常歩・速歩の加速度をそれぞれ馬側、人側について計測した。

3. 結果・考察
在来馬の平常時における血中アドレナリン濃度は与那国馬を除き、北海道和種馬、木曽馬、および野間馬において、サラブレッドに比べ有意に低い値を示した。これは「おちつき」に関して、比較的物事に動じない性格を裏付け、安全に障害者乗馬を行う上での適性が高いと評価した。また、加速度により揺れを分析した結果、それぞれの馬に特徴的な揺れを解析した。それらをもとに、例えば北海道和種馬の側対歩による特有な揺れは新たなリハビリテーションへの可能性を示し、木曽馬のゆるやかな揺れは筋緊張の高い身体障害者や健常の初心者の乗馬などに適していると考えた。


2003 HARs 学術大会
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