3.22 一般口演 G

入院患者の痛みと苦しみに対してのAATによる緩和効果
―肛門術後の痛みへの効果アンケートより―

高野正博

大腸肛門病センター高野病院(熊本県)


【はじめに】
肛門手術は昔から痛いものだと恐れられてきた。とくに痔核の場合は括約筋が温存されしかも創が3箇所できるため痛みが強い。その背景には「痛いだろう」という恐怖心が痛みを増幅させるという精神的要因があり、鎮痛剤を用いるが十分ではない。
【目 的】
そこで、今回我々は、AATのもつストレス解消、楽しさや和み、気分の向上などの精神的効果に着目し、AATが肛門術後の痛みの緩和に役立つかどうかを評価する第一歩として、肛門手術後の痛みがAAT前後でどのように変化するかを検討した。

【対象および方法】
対象は平成14年2月から8月の間に、肛門疾患手術のため入院する患者を対象に、「AATの術後の痛みへの効果アンケート」への協力者を募集した。術後4日目に1日2回動物とふれあってもらい、患者自身に動物とふれあう直前・直後・15分後・30分後・1時間後の痛みの程度をアンケートに記入してもらった。アンケートにはVAS(visual analog scale)を使用し、「痛くない」「少し痛いが気にならない」「痛みが強いが耐えられる」「痛くて我慢できない」という4点を入れ、その線上に患者自身の主観で痛みの程度を○印で記入してもらった。また参考にどういう時に痛いか、排便のあった時間、鎮痛剤の服用時間、入浴時間を、患者背景として、性・年齢・動物飼育歴、さらにAATの感想や意見も自由に記入してもらった。別に担当者の感想や使用動物を記録した。
方法としては対象群との比較で行うものもあるが、痛みは主観的で個人差があり、その比較は難しい。そこで、今回はイギリスのBailay氏の論を参考に、同一患者に動物とのふれあいを繰り返してもらい、あたかも電灯のスイッチを点けたり消したりするように、動物と接触する時としていない時とで、またその間の変化を見ることとした。

【結 果】
 アンケートへの同意を得られた患者54名に実施し、そのうち痔核および裂肛で2回ともふれあいができた有効症例は34例であった。患者に記入してもらったVASをもとに、痛みを0から100にスコア化し、時間経過毎の痛みをペインスコアにした。その結果、AAT直前と比べて、直後、15分後、30分後、1時間後で痛みが有意に減少していた。2回目も同様の結果であった。

【考案と結語】
 肛門疾患の術後の痛みに対するAATの効果を、34名を対象にペインスコアを用いて評価した。その結果、1回目のAAT直後にペインスコアは52.8±15.4から32.5±21.0へと痛みは有意に軽減し、さらに1時間後にも40.6±18.4と有意に軽減しており、痛みの緩和効果がみられた。2回目も同様の結果であった。
 以上のことから、AATには痛みを短時間に緩和させる効果があることが分かった。ただし長時間緩和させる効果は少なかった。AATに対する患者の感想や意見も良好で、今後さらに症例を重ね分析し、AATが痛みの緩和に役立つよう更に工夫を重ねていきたいと考えている。

 

2003 HARs 学術大会
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