|
|
犬の攻撃行動におけるDRD4遺伝子と生理活性物質との関連 鹿野正顕 太田光明 近年、犬は愛玩動物から伴侶動物として人とともに生活するようになり、新たな人と犬との関係が構築されている。しかし、両者の関係がより密接になるにつれ、人社会での犬の問題行動が注視されている。この問題行動のなかでも頻繁に見られる行動は攻撃行動であり、問題行動を専門に行っているクリニックの事例の約半数以上が攻撃行動である。一般家庭で飼われている犬の示す攻撃は、少なくとも10通り以上もの異なる攻撃型に分類されているが、攻撃行動の各型において気質による影響と後天的な学習による影響との関連性は明らかではない。人において、神経伝達物質に関連する遺伝子の多型が関与するとして注目されている。脳内神経伝達物質ドーパミンのD4受容体遺伝子(DRD4)の第3エクソンには反復配列多型が存在し、この反復回数の多い対立遺伝子を持つ人は、気質の1つの側面である新奇性追求を計るテスト(novelty seeking)の得点が高いとの報告がある。犬においてもDRD4の第3エクソンには反復配列多型が存在し、反復の違いから9種類の対立遺伝子の存在が発見され、それらの対立遺伝子の違いと気質及び後天的学習による個体特性であるpersonalityとの関連性が報告されている。しかし、分子レベルで解明が可能なのは気質部分であり、個体の行動特性の発現を明らかにするためには後天的な学習や、内的変化などの評価を考慮する必要性があると思われる。 そこで、本研究では一般の家庭犬において人に対する攻撃行動が見られ、訓練所に行動治療を依頼している3頭の個体に対し、攻撃行動の治療に用いられる服従訓練を行い、訓練の影響による尿中カテコールアミンの傾向を測定し、以下の項目について評価した。 ・ 各個体の服従訓練にともなう尿中カテコールアミン濃度の変化の違い ・ 服従訓練による攻撃行動の変化 ・ 各個体における訓練前後の尿中カテコールアミン濃度の変化 ・ DRD4エクソンV多型領域と訓練による尿中カテコールアミン濃度変化との関連 また、興奮性、闘争性に関与すると言われているドーパミンの受容体であるDRD4の遺伝子多型と尿中カテコールアミンの関連を調査し、攻撃行動を示す犬の気質、内的変化およびそれに基づく行動変化の関連性を考察した。
|
2003 HARs 学術大会 |