3.22 一般口演 D

アニマルセラピーとロボットセラピーにおけるヒトへの効果に対する比較検討(1)

成田 学* 岩本 隆茂** 森 伸幸** 斎藤 恵一**
*(北海道医療大学看護福祉学研究科臨床心理専攻) **(北海道医療大学心理科学部)


【目的】
 近年,徐々に動物介在活動/療法(以下AAA/T)が病院や施設に浸透し,心理的効果,生理的効果及び社会的効果が実証されるようになり心理療法の補助的な役割として紹介されつつある.しかしながら,AAA/Tには未だにアレルギー問題や人畜感染症等の課題も残されており,AAA/Tを継続的に実施していくことを仮定すると完全に対処できるとはいえない. そんな中,ペット型ロボットを利用してAAA/Tに応用できるのではないかという考えが登場し,実際にいくつかの病院や施設でもロボット介在活動/療法(以下RAA/T)として実施されている.橋本(2001)は,観察法においてヒトの行動を検証した結果,行動はほとんど変化が無かったと報告している.また横山(2001)は病院の小児科病棟に動物の変わりにロボットを代わりに導入したところ心因性歩行障害をもつ患者がこれをきっかけに感情移入が出来るようになり,歩行障害も治療されたと報告している. このようにRAA/Tは効果の可能性を示し今後の発展の兆しを見せている.だが, RAA/TがAAA/Tと同様な効果があることを示す研究や,RAA/Tの効果の検討をした研究報告も少なく,心理学的効果や生理学的効果についての検証もほとんど無い.さらにRAA/T自体の研究報告も少なく,AAA/Tと同様な効果があるのかは疑問が残る. そこで,本研究では,1)AAA/TとRAA/Tでのヒトにおける心理的効果,生理的効果の比較検討,2)実際にRAA/Tは心理学的効果や生理学的効果があるのか,3)RAA/Tの可能性,を検証する必要があると考えソニーのAIBOと小型室内犬を用いAAA/Tの再検証及び上記の項目について検討し報告をする.
【方法】
 対象は北海道医療大学看護福祉学部の大学生で,事前にアンケートを実施し実験参加の有無を確認し70名(男性20名,女性50名)を得た.この中より無作為に抽出した40名(男性9名,女性31名)平均年齢は21.73歳,を10名1群として実験群1(イヌ群),実験群2(AIBO群),統制群1(ビデオ群),統制群2(ボール群)となる4
群に分けた. 心理指標としてはSTAI,POMS,UCLAを実施し,生理指標としては皮膚温と心拍数の測定を行った. 実験は9分間で,実験群1ではイヌと遊ぶ,実験群2ではAIBOと遊ぶ,統制群1では中性ビデオをみる,統制群2ではボールに触る,という課題を与えた.

【結果と考察】
 実験課題時において4群間で皮膚温と心拍数について一元配置の分散分析と最小有意差法で多重比較検定を行った.これによって皮膚温,心拍数とも群間で有意に差があることが認められた.多重比較ではイヌ群とAIBO群,イヌ群とビデオ群,AIBO群とビデオ群で有意であった.また,心理指標は実験課題後に行ったデータを用い一元配置の分散分析と最小有意差法で多重比較検定を行った.結果はPOMSではD因子においてボール群とアイボ群で有意であった.STAIではイヌ群とビデオ群,イヌ群とボール群で有意差が認められ,AIBO群とビデオ群,AIBO群とボール群で有意傾向にあると示唆した.UCLAでは4群間で差は認められなかった.実験結果によって以下のことが示唆された.
・イヌと触れ合う場合とロボットと触れ合う場合では,イヌと触れ合う方が心理的効
果に変化が起こりやすい
・イヌ,ロボットと触れ合うと生理的効果の変化は起こるが,イヌと触れ合う方がよ
り変化が大きい.
 以上のことからAAA/Tにおける効果は実証され,知能ロボットによるヒトに対する
セラピー効果は十分に考えられる.現時点では,AAA/Tのほうでより大きな効果が期
待されるが,今後のロボット技術の発達や研究を積み重ねていくことによりRAA/Tも
新たな心理療法として発展すると考えられる.

 

2003 HARs 学術大会
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