3.21 一般口演 L

ペット好きだけで、ペットビジネスに就職するのは大丈夫か
- ペット系専門学校生に対する調査から -

福岡 今日一

同志社大学大学院 総合政策科学研究科・京都府


T.はじめに
人と動物のより良い共生関係の実現には、ペットビジネスの充実が必要不可欠である。しかし、2000年秋実施のペット業者動物愛護意識調査から、動物愛護団体等が主張する程ではないにしろ、ペットビジネス業者の多くは、動物に関する意識や知識が貧弱であるという結果が得られた。ペットビジネス業界には、動物に関する基礎的な知識が無くても簡単に業界に参入が出来、また参入後も知識を修得する場がないという致命的な欠点が明らかとなった。
他方、ペットビジネスに就職を希望する若者が急増し、全国各地にペットビジネス系の専門学校が設立されている。高度な動物学を学ぶ大学を除けば、動物に関する知識を習得できる場は、それらの専門学校しかない。現在、専門学校で動物に関する基礎知識を修得した卒業生の大多数がペットビジネスにしており、ペットビジネスの発展にペットビジネス系専門学校が寄与する割合が非常に大きなものとなりつつある。とはいえ、ペットビジネスに就職したものの現実と理想のギャップから離職するものが多いのも、また事実である。
そこで今回、ペットビジネス系専門学校に通う学生に、動物愛護やペット飼育・販売に関する質問を行い、将来ペットビジネスに就職を希望する専門学校生の抱える理想と現実の乖離を浮き彫りにして、その改善点の洗い出すことを目的とした意識調査を実施した。

U.調査方法
1) 調査対象: ペット系専門学校生 536人(回答者514人、有効回答率 95.9 %)
2) 調査時期: 2002(平成14)年11月1日 〜 11月30日(1ヶ月間)
3) 調査事項
@ ペットビジネスと動物愛護の関係について
A 生体販売や生体展示について
B 外国産動物の輸入や飼育について
4) 調査手続: 調査票の直接配布、回収(各学校に委託、HR時に実施)。

V.結果と考察
今回の意識調査によると、生体販売はやや肯定派が多く(賛成35.6%、反対20.8%)、生体展示は意見が割れ(賛成28.2%、反対30.1%)、感染症の恐れのある外国産動物の輸入は圧倒的に否定的(賛成1.4%、反対89.8%)であり、エキゾチック・アニマルの飼育は肯定派が多い(賛成31.3%、反対21.6%)などの結果が得られた。そこから、ペットビジネス系専門学校の学生は、ペットビジネスへの就職を希望しながらも、ペットビジネスの抱える諸問題についての関心は概して希薄であることが分かった。専門学校生の多くは、「ペットは好きだが、ペット問題はわからない。」としており、奥行きの深いペット問題に対する認識は欠如していることが明らかとなった。
この認識欠如が、人間の営利追求というペットビジネスの本音の部分(現実)と動物の権利重視という動物愛護の建て前の部分(理想)との乖離を引き起こし、ペットビジネスからの離職を促す誘因となっていると考えられる。実技重視である専門学校でのカリキュラムに、有能なペットビジネスマンを養成する意味からも、ペット問題を論じる講座を設ける必要であろう。

 

2003 HARs 学術大会
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