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4年生の教室に持ち込まれた動物のその後と児童の関わり 藤村菜穂1) 内山文子2) 竹内一男3) 東京都西側郊外と南西部の公立小学校の4年生各1クラスの教室に児童や教師が持ってき動物に児童がどのように関わったかをまとめた。ほとんどの児童は動物が好きで担任が興味を示すと次々と持ち込み大変である。 2校の教室に持ち込まれた動物は次のようなものであった。 ・N小学校 ハムスター トカゲ カエル メダカ ヒメモノアラガイ カイコ アリ カブトムシ アゲハチョウ モンシロチョウ ヤゴ オカダンゴムシ ・ H小学校 ハムスター カメ ヤモリ ガマガエル オタマジャクシ キンギョ カニ ザリガニ クモ バッタ アゲハチョウ カマキリ ヤゴ オカダンゴムシ ○ 飼育の様子 カエル・・・児童が持ってきた卵をオタマジャクシからカエルになるまで育て、逃がした。 アゲハチョウ・・・児童が持ってきた蛹で、羽化を観察しアゲハチョウを逃がした。 ヤゴ・・・プール掃除の時に採集したり、児童が持ってきた。アカムシを採集し飼育した。 ○ 児童が教室に持ってきたが、飼育せず逃がした動物 トカゲ アリ ダンゴムシ・・・クラスの状況からうまく飼育できないと判断させ、児童が逃がした。 ○ 児童が飼わない方がよかったと思った動物 カニ、オタマジャクシ・・・臭いから カエル・・・逃げるから、嫌いだから。 カイコ・・・プニプニしているから ヒメモノアラガイ・・・小さくてよく見えない 生き物はあまり好きでないと言う児童もいる。 ○ 児童が飼ってよかったと思っている動物 カイコ・・・赤ちゃんの時から見られる。繭玉をとったり、繭玉工作をした。 蛹を殺すのはかわいそうだとの意見で、蛾の羽化とその後の交尾、産卵を見た。 ハムスター・・・かわいいから。生き物飼育が楽しくなった。 3年生の10月から2匹の個別飼育を始めた。最初の頃は休み時間に大勢が取り合って触っていたが、時が経つに従い人数が限ら今も好きな子どもは休み時間などに触っている。 1匹は約5ヶ月後、逃げ出しトイレで溺死していた。児童になぜ死んだかを説明し、死体を見たい児童には見せ、校庭のすみに埋葬した。翌日の朝は花でいっぱいであった。死に対して漠然としかとらえない子や、悲しそうにしながらも、またもらってきて欲しいと思う児童も1、2人ではなかった。かけがえのない命の大切さを児童と話し合い、ハムスターの気持になり、気を使い飼育することの大切さを認識させ、今も1匹をかわいがっている。同じ様子がH小学校でカメが死んだ時に見られ、1匹ではかわいそうだからもう1匹の意見が出た。話し合い残された1匹のカメを大切に飼育した。ハムスターやカメのお墓には今でもお参りをする児童がいる。 ハムスターは生き物係が交代で世話をし、週末は係で順番を決め持ち帰っている。長期休暇中は先生と児童が相談して日程を調節し、輪番で各自の家で世話をする方法が継続している。 4月からのクラス再編に伴うのハムスターの今後についての児童の気持は以下のようである。飼いたい人に飼ってもらう。 3学期の生き物係りが多いほうのクラスで来年も飼う。 生き物係りに任せる。飼いたい人に飼ってもらい、もしだれも飼う人がいなければ大学に返す。 職員室で飼う。先生の受け持ったクラスで飼ってもらう。 どの意見も児童が真剣に考え、ハムスターへの気持ちが込められているが、まだ再考の必要がある。児童達はクラスでハムスターを飼育していることを誇りに思い、自信にもつながっている。また、保護者も肯定的に受けとめてくれている方が多く、それが児童にプラスに働いている。あれもこれもと飼育するのではなく、今飼育している生き物に常に気を配り、具体的なヒントを与えよく観察させ、世話させることで、生き物の不思議さや、飼う煩わしさも感じることで、本当の世話の楽しさを知り、命を大切にする心が育つのではなかろうか。
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2003 HARs 学術大会 |