3.22 一般口演 K

動物がヒトに及ぼすソーシャルサポートに関する研究

西野 弘員  間 文彦

広島国際大学 保健医療学部 看護学科


1.はじめに
ソーシャルサポートをCaplan,G(1974)は,「家族や友人,隣人など,ある個人を取り巻く様々な人々からの有形・無形の援助」と概念化した。近年,それぞれの環境においてある個人を取り巻く人間がソーシャルサポート源(サポートの授受が成り立っている人々)になりうるかどうかによって,個人の身体的,精神的健康に影響を及ぼすことが報告されている。
 ところでソーシャルサポート源は人間のみではなく,動物もなりうるのではないか。動物がヒトに身体的・精神的健康に影響を及ぼすという研究は,欧米では数多くなされているようである。これまでの研究報告において動物がもたらすヒトに対する影響は,生理・身体面への作用,精神面への作用,社会面への作用の3側面に分類できると考えられる。
本研究では動物がヒトに及ぼすソーシャルサポートの機能について検証することを目的とする。

2.方法
 予備調査において学生(有効回答数116人)を対象にして動物に対する肯定的感情を持った場面・状況・その時の思いについて自由記述を求めた。さらに動物の種類についても1人2種類以内で記入を求めた。
本調査において予備調査から得られた回答を元に動物への好感度と動物からのサポート内容と思われる項目を抽出し,質問紙を作成した後,5件法(1点〜5点を配分,点数が高い程肯定を示す)で回答を求めた。被験者は広島県内の4年生大学看護学科の学生120人であり,集団型の対面回答型及び持ち帰り回答型を併用し,回収率は83%,有効回答数は91人{女性84人,男性7人,平均年齢20.11(.85)}であった。

3.結果と考察
 予備調査において得られた動物の種類は13種類であったが,延数の多かった犬(72),猫(31),げっ歯類(20),鳥類(12)をソーシャルサポート源とし,それぞれについて好感度項目(8項目)とサポート項目(23項目)の期待の程度について測定した。
4種類の動物について好感度項目の因子分析(主因子法)を行ったところ,すべて1因子構造であった。好感度得点は犬4.19(.85),げっ歯類3.77(.80),猫3.65(.96),鳥類3.29(1.05)であり,げっ歯類と猫の得点には有意な差が認められなかった。
続いて4種類の動物をサポート源とするソーシャルサポート項目について因子分析(主因子法,バリマックス回転)を行ったところ,犬,げっ類,鳥類は3因子構造(第1因子:情緒的サポート,第2因子:自尊向上サポート,第3因子:社会生活サポートと命名)であり,猫においては2因子構造(第1因子:心理社会的サポート,第2因子:自尊向上サポートと命名)であった。ソーシャルサポート得点は犬3.90(.76),猫3.28(.87),げっ歯類3.22(.90),鳥類2.94(.93)であり,猫とげっ歯類の得点には有意な差が認められなかった。
4動物の好感度得点とソーシャルサポート得点において強い正の相関が認められたことから,Lagoら(1988)が行ったペットを持つ高齢者の追跡調査から得た考察と同様,動物は動物を好むヒトに対してソーシャルサポート機能を果たす傾向があることが示唆されたと考える。
4動物の飼育経験の有無と因子別ソーシャルサポート得点において1元配置分散分析を行ったところ,4動物すべての因子別ソーシャルサポート得点において飼育経験がある方がない方より有意に得点が高くなっており,飼育経験は動物から受けるサポートを飼育経験がないヒトよりもより強く認知させることが示された。

 

2003 HARs 学術大会
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