3.22 一般口演 J

ウサギとモルモットを用いた訪問型動物介在活動
−特別養護老人ホームとデイサービスにおける調査−

吉田恵美 亀山祐一

東京農業大学生物産業学部・北海道


1. はじめに
 高齢者福祉施設における動物介在活動は、施設飼育型か施設訪問型が適切と思われる。施設飼育型は動物と触れ合う機会が多いものの、動物嫌いな人への対応、飼育の手間と経費が必要であり、実際に行うのは困難なことが多い。一方、施設訪問型は飼育に係わる問題がなく、ボランティアとの会話やふれあいも体験できる利点がある。そこで本研究はハンドリングが容易なウサギとモルモットを用い、特別養護老人ホームとデイサービスに対して定期的な訪問型動物介在活動を行い、心理的・生理的に好ましい影響があるかどうかをビデオ評価、活動前後における血圧の変化、QOLで評価した。
2. 調査方法
 ウサギとモルモット各1頭を使用し、北海道網走市のデイサービスと特別養護老人ホーム(以下特養)を訪問した。対象者はデイサービスが当日いた方全員、特養が施設職員と選抜した入所者5名とし、毎回の任意参加者を記録した。活動期間は2002年9月〜12月上旬とし、活動時間は午前中の30分〜1時間とした。訪問の頻度はデイサービスが月1〜2回のフリーデイの日、特養が2週間に1回とした。活動の様子はビデオ撮影し、@活動中の表情、A積極性、B活動中の会話、C動物との接触、D動物をひざの上にのせた時の行動を5段階評価した。また、活動前後に血圧を測定し、施設職員にQOL評価を依頼した。比較対照は両施設で通常行われているレクリエーション(以下通常レク)とした。通常レクは前述した@〜Bの項目をビデオ撮影で評価したが、QOL評価を実施できなかった。
3. 結果および考察
 デイサービスはほぼ固定された約20名が対象者であった。動物介在活動への参加は6〜7回が2名、1〜2回が5名に留まり、対象者に比して動物が少なすぎるためと思われた。特養の動物介在活動には2名が7回、3名が4〜5回参加し、4名は通常レクよりも数多く参加した。活動後の血圧は上昇することが多く、活動の種類、参加回数による一定の変動パターンがなかった。動物介在活動日のQOLは、両施設ともに参加回数による変化がなかった。ビデオ評価における動物介在活動と通常レクの共通観察項目では、特定の傾向が観察された。デイサービスは特養よりも笑顔が多く、笑顔は通常レクよりも動物介在活動で多くみられた(デイ・動物介在:3.5点、デイ・通常レク:3.2点、特養・動物介在:3.0点、特養・通常レク:2.1点)。活動に対する積極性は施設による差がなく、動物介在活動よりも毎回活動内容の替わる通常レクが高かった(デイ・動物介在:3.4点、デイ・通常レク:3.9点、特養・動物介在:3.0点、特養・通常レク:3.9点)。活動中の会話は特養よりもデイサービスが多く、特養における会話は通常レクよりも動物介在活動で多かった(デイ・動物介在:3.8点、デイ・通常レク:3.5点、特養・動物介在:3.7点、特養・通常レク:1.7点)。動物介在活動への参加者は動物の飼育経験があり、動物好きな方が多かった。動物介在活動はストレス緩和よりも、老化防止に好ましいストレッサーとして作用すると思われた。また、動物介在活動は会話のきっかけとなって社会的効果をもたらし、その効果は通所のデイサービスよりも日常生活に変化の乏しい特養で高いと推測された。

 

2003 HARs 学術大会
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