動物福祉教育が効果的に行われると、子どもの心と考え方を変えることができ、ひいては動物福祉の向上につながる。動物愛護教育により、動物および人間に対する思いやりのある態度や尊敬の念、そして動物に対する責任ある行動や自尊心が発達するといった効果がもたらされるということは、一般によく言われることであり、科学的にもさまざまな証拠が挙げられている。
今回の発表では、世界動物保護協会(WSPA)の行っている教育活動について簡単に紹介する。動物愛護教育(Humane education,
HE)、なかでも動物福祉教育(Animal welfare education, AWE)は、動物が感覚をもつ存在であることや、環境の持続可能性についての関心を向上させるために、非常に重要なものである。
教育はWSPAの中核的な目的の一つに据えられている。WSPAの子どもに対する教育活動は、学校における正式な教育カリキュラムに特に焦点を当てており、たとえばラテンアメリカの学校における環境教育プログラムのなかに動物福祉に関する単元を盛り込むといったことを行っている。他にも、WSPAのプロジェクトとキャンペーンのための教材を用意したり、アフリカやバリでは会員団体が実施している「カインドネス・クラブ(Kindness
Club)」の活動を支援したりしている。
学校における動物に関する教育のための改善策、資料や教材、プログラムなどについては、WSPAだけでなくすでにさまざまな団体が良いものを提供している。学校において動物福祉を基礎とする動物愛護教育プログラムを行うかどうかは、率先して行う熱心な教師がいるかどうかにかかっていることが多い。動物福祉プログラムの継続は、スタッフの変更や実施者の不在により困難になる可能性もある。そこでWSPAは、5歳から16歳までの子どもを対照とした「国際動物福祉教育(International
Animal Welfare Education , ‘IN AWE’)プログラム」を開発した。これは、現存するすべての教材の良い点を網羅して一つの枠組みをつくることによって、世界中の学校教育システムに導入し活用できることを目指している。WSPAは各国政府に対して、すでにある教科のなかに動物福祉の観点を盛り込むことを奨励している。このプログラムは、教師の熟達によって教師自身が動物福祉教育を実施できるようにすることに特に主眼を置いている。プログラムの成功を判断するためには、子どもの態度と行動の変化を観察し、きちんと評価することが必要不可欠である。
(日本語訳:帝京科学大学 加隈良枝)