動物介在教育(Animal
Assisted Education : AAE)の多面性
横山章光
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科講師
ペットと人間の様々な関係が研究されるにつれ、それらをポジティブな方向に持っていくためには、教育現場において発達中途にある子どもたちに、この視点からの関与をすることが効果的であると考えられてきている。その重要性がAAEという言葉を生み出し、2001年の第9回IAHAIOでは「動物介在教育に関するガイドライン」が宣言された。
現在のところ、動物介在教育に対する取り組みは多様で曖昧であるため、ここで分かりやすく分類してみる。
ここで用いる「動物」は、学校で飼う、教師が同伴する、動物に訪問してもらう、ビデオや本などを使用するなどのやり方が挙げられよう。
@動物を通して生命・自然を学ぶ(≒ 対:自然=自分)
少子化、機械化、都市化などが進むにつれて体感できなくなってきたことを動物を通して学んでいく試みである。内容としては生や死、食事や排便、世話、交尾や出産、臭いなどがある。
A動物との付き合い方を学ぶ(≒ 対:動物)
犬による咬傷事故は各国で大きな問題となっている。それは犬という動物の特徴を把握していないために起こることが多いため、それを教育する。
また、様々な動物を飼う際のエンリッチメントや、それぞれの動物の快・不快のサインを知ることも学習のひとつとなる。それは「相手の立場に立って考える」ということを学ぶことでもある。
B動物との関係性に焦点を当てる。(≒ 対:他人)
これは教育というより、保護者や教師からの関わりが必要な部分である。
例えばペットが死んだ際の対応によってそれは学習たりえる。子どもの個々の死に対するイメージを作ることにもなり、その動物との関係性は、人間との関係性につながっていく。また、ペットの虐待が強く持続的に見られるケースでは、専門家への相談が必要になることもありうる。
C動物を用いて学習効果を狙う(≒ 対:能力)
これはむしろ動物介在療法(AAT)に近いものであるが、例えば教育現場でなんとなく犬や猫を徘徊させておく、つまり教室をぶらぶらさせる、という取り組みにより、子どもたちはむしろ授業に集中し、問題行動を減らし、社会・認知的発達を助ける、などのポジティブな結果が出ている。
さらに米国で最近広がっているREAD(Reading Education Assistance Dogs)というプログラムでは、図書館や学校などに訪問してくる犬に対して、子どもたちが本を読んであげる。それにより、音読が不得意な子どもがそれを厭わなくなったり、本を読む楽しみを見つけたりする。しいては自尊心の向上につながると言われている。
これらさまざまな介在を場面場面によってうまく用いることが最大の効果を生み出すと考えられるが、今後の目標としては、それらの効果の評価(短期・長期的)、そして現場の教師への教育プログラムの充実が挙げられよう。
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