3.25/26 ポスター H

児童における環境教育
ー動物園動物を教材とした動物介在教育の視点からー

小林 智男,太田 光明
Toshio Kobayashi, Mitsuaki Ohta

麻布大学 動物人間関係学研究室・神奈川県


 動物園の役割は、娯楽、教育、保護および研究の4つが挙げられ、なかでも「種の保存」や「環境教育」に期待が集まっている。近年、日本において犯罪の低年齢化が進み、その件数は年々増加する傾向にあり、小学校における情操教育や環境教育の必要性が見直され始めている。一方、自然環境の減少によって、動植物と日常的に接することのできない児童も多く、これらを包括的に有する動物園の存在は、児童に対する教育のさらなる発展においてまさに高い有用性をもつと考えられる。
 本研究は、環境教育として動物園動物を教材とした動物介在教育(Animal assisted education: AAE)を小学校4年生児童(男子77名 女子64名 計141名)に対し実施した。参加した児童を@動物園訪問後に動物や自然に関する授業を行うグループ、A授業後に動物園訪問を行うグループ、B授業のみを行うグループの3群に分け、心理測定尺度(児童用共感測定尺度、学習目標志向測度)および授業内容に沿った動物や自然に関するテストを実施し、動物園訪問の効果、自然や動物に関する教育効果の検討から児童の社会性や環境教育について考察した。
 学習目標志向測度において、動物園訪問した児童は有意な得点の上昇が示され(ウィルコクソン符号付順位和検定、課題志向:P < 0.01、協同志向:P < 0.01、競争志向:P < 0.05)、動物園に足を運ぶことで学習意欲の向上に繋がった。未訪問の児童においても実験前後で上昇が見られ(ウィルコクソン符号付順位和検定、課題志向: P < 0.05、競争志向:P < 0.01)、これは自然物(ゾウ糞)を使って作業したことが一番の要因と思われる。児童用共感測定尺度において、動物園訪問によって成績の向上に有意な関連が認められ(χ2検定, df = 1, χ2 = 4.25, P < 0.05)、動物園を訪問した児童は有意に他者との情動的な共感を得ることが示唆され、動物園動物および環境問題に関するテストの成績においては、動物園訪問を実施した児童の方が未訪問の児童と比べ有意に高い結果(Mann-Whitney’s U test, Z = 3.09, P < 0.01)が得られ自然環境に対する意識が改善した。またペット飼育経験のある児童は、そうでない児童より実験前後で有意に上昇していたことから(ウィルコクソン符号付順位和検定、課題志向:P < 0.05、自己志向:P < 0.01、競争志向:P < 0.01)さ、ペットの存在も児童の学習に影響されていることが考えられる。  
 これらのことから、動物園を訪れ、その動物を教材としたAAEが環境教育において高い効果をもち、動物園の有用性が改めて確認された。
2006 HARs 12th. 学術大会
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