3.25/26 ポスター F

矯正施設における動物介在プログラム
〜日本で行うにあたっての課題〜

下山 裕美,井福 亜希子,横山 章光
Shimoyama Yumi ,Ifuku Akiko,Yokoyama Akimitsu

帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科・山梨県


 再犯罪者の増加など日本の矯正施設での問題は深刻である。海外ではそれらの対策として動物介在プログラムを行っていて、近年ではこのプログラムがマスコミによってドラマティックに報道される機会が増えてきている。そこで、日本の矯正施設の現状と、海外で行われている矯正施設での動物介在プログラムを調査、日本で行う際の問題点と解決策の提示、海外で実施されている方法が日本でそのまま適応するか、また日本で行う上で最善の方法を明らかにすることを目的とした。
 海外での矯正施設における動物介在プログラム:この活動の目的は、受刑者に将来の雇用の為の技術を教え、孤独感の緩和、などである。種々の動物によっておこなわれており、ペットや介助犬の育成、実験動物の繁殖や稚魚の孵化、動物が訪問してくるなどがある。
 海外での実施の結果:心理療法面での効果には、自己の制御、暴力の減少、職員との関係の向上などがあり、この結果は出所後の自殺の防止、再犯率の低下などへの期待ができる。また、現在日本で増加しつつある施設内の暴力、殺傷事件の低下への期待もできる。職能訓練面での効果には、社会技能訓練と直接的なものとがあり、社会技能訓練については、会話も増え対人関係が強化されたという結果が得られているが、直接的な職能訓練についての効果は薄いという結果がでている。この様な結果が報告されているが、効果の科学的証明になっておらず、内容による結果の違いがわからため、最善の方法を明らかにすることはできなかった。加えて、効果が生じるべくして生じているという指摘もある。
 日本でプログラムを行う際の問題点 
 取得できる資格:現在矯正施設では公的な資格・免許のみで、取得可能なものは家畜人工授精士である。
 資金面:多くの施設では犬を飼育する方法が行われているが、この方法は費用がかかる。
海外では募金に頼っている場合が多い。
 その他:施設、時間、参加者、衛生面など
 考察:海外で行われているのと同様の形でプログラムを実施するのは、現実的にかなり困難であり、出所後の長期的調査、プログラムとその調査のガイドラインが必要である。日本での実施を推し進めるためには、日本の法律、文化、現状などを考慮したうえで日本独自の方法で行うことを考えるべきである。ドッグシェルターの犬を飼育する方法を日本で行う場合、資金、敷地、スタッフの不足や拘束時間、衛生面、資格が取得できないなどの問題があり、現在の日本の状態では、良い結果が得られないと思われる。
 日本で行う為のプログラム案の提案:構外作業として牧場と提携して行い、家畜人工授精士の資格を取得するという方法が最善である。外部委託により、敷地、資金面の問題を解決出来、資格取得が就労にも役立つ。心理面の効果については、動物種の違いによる効果の差が明らかになっていないが、海外では家畜で行っているプログラムもあることからその効果を期待する。

 

2006 HARs 12th. 学術大会
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