3.25/26 ポスター B

麻薬探知犬の合否に影響する要因

前島雅美1、2、井上(村山)美穂1、外崎肇一3、村山裕一4、伊藤愼一1
Masami Maejima, Miho Inoue-Murayama, Keiichi Tonosaki, Keiichi Tonosaki, Yuichi Murayama, Shin’ichi Ito

1岐阜大学応用生物科学部・岐阜県、2(株)TCPL・東京都、3明海大学歯学部・埼玉県、4(独)動物衛生研究所・茨城県


【背景】
麻薬探知犬は、イヌのすぐれた嗅覚を生かして、空港や海港で活躍しているが、訓練センターでの合格率は約30%と低く、訓練早期での適性診断が望まれている。本研究では、適性犬の選抜への応用を目指し、行動特性および遺伝子型の関与の度合を調査した。

【材料・方法】
東京税関麻薬探知犬訓練センター(千葉県)において、候補犬は1ヶ月間の馴致訓練後、約3ヶ月間の麻薬探知訓練を受ける。馴致訓練開始2週間後に、候補犬197頭(最終結果:合格60頭、不合格137頭)の行動特性を、『活発性』、『服従性』、『集中力』、『人なつこさ』、『他犬への攻撃性』、『臆病』、『ダミー欲』の7項目について評価した。さらに、ヒトで行動・気質との関連が示唆されている、ドーパミンレセプターD4(DRD4)、セロトニンレセプター1A(5HT1A)、アンドロゲンレセプター(AR)、セロトニントランスポーター(5HTT)の、4遺伝子8領域の遺伝子型を判定した。

【結果・考察】
7項目の行動特性は、評価値にもとづく主成分分析により、7つの主成分(PC1-PC7)が導出された。PC1は訓練性能に関連する『集中力』と『ダミー欲』、PC2は『臆病』、PC3は『他犬への攻撃性』で、因子負荷量が高かった。合格または不合格の両グループで、候補犬の主成分スコアを比較した結果、合格犬のPC1スコアが有意に高かった。この結果から、訓練性能が、合否に強く影響していることが示唆された。PC1スコアの-0.1を選別の新しい基準におくと、馴致訓練2週間後の時点で、合格犬の95%を確保し、逆に不合格犬の51%を除外することができる。
DRD4のエキソン1、イントロン2、 エキソン3の3領域、5HT1A、 ARの2領域、5HTTの2領域で、それぞれ2、 2、 3、 2、 2、 4、 8、 7種類のアレルが見いだされた。遺伝子型またはハプロタイプで分けた2グループの間で比較した結果、PC1スコア、PC2スコアにおいて差がみられたが、統計的に有意ではなかった。また、合格率との関連は見いだされなかった。
本研究の結果、訓練性能が合否に強く影響し、早期選別の主な指標になることが示唆された。今後、行動に関与する遺伝子の影響についても、明らかにする必要がある。

 

2006 HARs 12th. 学術大会
演題一覧
前演者の抄録  •  次演者の抄録