3.25/26 ポスター @

広汎性発達障害児における障害者乗馬活動中の発語訓練

慶野裕美1)、美和千尋2)、川喜田健司3)、慶野宏臣4)、細川昌則1)
Hiromi KEINO Chihiro MIWA Kenji KAWAKITA Hiroomi KEINO Masanori HOSOKAWA

1)愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、愛知県 2)名古屋大学医学部、愛知県
3)明治鍼灸大学生理学部、京都府 4)NPO法人篠木・レモンクラブ、愛知県


障害者乗馬は広汎性発達障害児に非常に大きな効果を及ぼす事が知られるようになってきた。効果を数値変化として表示できるHEIM scaleを用いて、10項目(対人関係、模倣行為、情緒発現、突発動作、執着行動、変化順応、注目行動、恐怖反応、言語コミュニケーション、非言語コミュニケーション)において効果発現を検討した。最も効果の現れにくい項目は言語コミュニケーションであった。そこで獲得言語コミュニケーションを7段階に分けそれぞれの段階毎に適合させたプログラムを立案、実行し、その効果を検討した。
獲得言語コミュニケーションのタイプ分け
 第1段階  まったく音声がでない             
 第2段階  喃語のみでる                 
 第3段階  単語が出るが意味は理解していない       
 第4段階  意味のある単語は出るが数語のみに限られる   
 第5段階  単文で会話が出来る              
 第6段階  多くの単文で会話が出来るが、話題が限られる  
 第7段階  問題なく会話が出来る
実行したプログラム             
第1段階
  まず音声を出すことを目的とする。
  乗馬での速歩による呼吸器系への刺激により、発音が促される。
  この時期は速歩を多く取り入れる。
第2段階
  喃語が出始めたら、対人関係を作ることを目的とする。
  最初に発語を誘導する言語を決定する。
   一般的には一番接触の多い母親を意味する「まま」とする。
   母親の出来るだけ表情のない写真を作成し、サイドウオーカーが「まま」と
     いいながら馬上で写真を見るよう誘導する。
第3段階
  最初に獲得した「まま」に意味づけをする事を目的とする
   常歩をしながらあそこで「まま」と呼ぼうねと働きかけ、いつも決まった地点で
     サイドウオーカーが大声で「ままー」と言う
   子供が「まま」と言えたら誉めて大好きな速歩をする。
     ママと言えなくてもサイドウオーカーと共に叫び声が出せたら、誉めて速歩をする
  
   速歩の終了地点で母親にいてもらい、ママだよ言えたねと大いに誉めてもらう
意味は理解していなくても単語が出始めたら、できるだけ多くの単語を獲得するよう馬上でのゲームで工夫する
   またそれぞれに意味を持たせるために絵や写真と対応して単語を言いながら、確認する
第4段階
  助詞を上手く使って単文を言えるようにすることを目的とする。
   ○○ちゃん が バナナ を とります
   かご に みかん を 入れます
     それぞれをカードにしてゲームとして組み合わせる
  空間を意味する言葉(こちら、あちら)、色を意味する言葉など抽象的概念もゲームとして理解できるよう工夫する
第5段階
  単文がいくつも出来るようにすることを目的とする。
   それぞれの手順を絵にしてカードをまとめたノートを作る
   カードをめくりながら、単文を言ってその手順通りの作業をする。
     例 ヘルメットをかぶります
       馬にのります
       ゲームをします
       速歩をします
       馬からおります
第6段階
  馬上では非常に集中力が発揮されるのでそれを利用し、さらに本人の出来ることよりも少し上の課題をあたえ、集中がとぎれないようにする。
  速歩中に行う課題も多く取り入れる
以上のプログラムでそれぞれの段階の子供達に改善が見られた。
特に2段階において、同じ介入法を用いることによって介入後比較的早く3段階へと
飛躍が見られた。さらに例数を増やして検討したい。
2006 HARs 12th. 学術大会
演題一覧
 次演者の抄録