3.26 一般口演 J

介助犬に対する肢体不自由者の意識調査

山本真理子,太田光明
Mariko Yamamoto, Mitsuaki Ohta

麻布大学 動物人間関係学研究室・神奈川県


 身体障害者補助犬法が2002年に施行されてもなお、補助犬の普及は進まない。特に介助犬は日本の実働数がおよそ30頭であるのに対し、アメリカでは数千頭、イギリスでは約1000頭と、欧米先進国の状況と比べてわが国の遅れには深刻なものがある。しかし、数年前に大阪の奉仕団体が介助犬の育成支援をしたにも関わらず、希望者が半年近く見つからなかったこと、さらに、介助犬の希望者数を産出するにあたり基にされている、「盲導犬に関する調査」から、盲導犬の潜在希望者数はおよそ4,700人といわれているが、年間の使用申込者は約150人程度にとどまっているという事実から、介助犬が実際に日本で不足しているかは疑問が残る。本研究では介助犬普及を目的として、かかる状況の原因を明らかにするために、介助犬に対する肢体不自由者の意識を調査した。
 調査期間は平成17年8月1日から平成17年12月1日で、全国39団体の社会福祉協議会等を介して肢体不自由者を対象に郵送調査で行われた。
641部が有効回答として得られ、回収率は50.3%だった。その結果は以下のようである。

1) 介助犬を希望したのは全体の12.5%(n=80)であった。

2) 介助犬を希望する理由として、各介助作業が40%(n=32)ほどであるのに対し「精神的な支え」と答えた人は63.8%(n=51)であった。

3) 介助犬を希望しているにもかかわらず、現在介助犬を所有していない理由は「入手方法が不明」、「入手しにくい」、「住宅問題」、「世話が大変」など介助犬育成の遅れや認識不足、障害者自身の問題から所有をためらっていることがわかった。

4) 介助犬を希望しない理由として、「世話が大変」が48.2%(n=240)であった。

5) 犬の飼育経験と介助犬希望には関連があり(p<0.01)、犬の飼育経験がある人は介助犬を希望する人が有意に多かった(p<0.05)。

介助犬を希望している人も希望しない人も、介助犬に関して「犬の世話」に不安を持っていることが分かった。また、介助犬を希望している人は「犬の世話」、「将来希望する」などの理由ほかに「入手方法がわからない」、「住宅の問題」などから、実際に申し込みまでいたらないということがわかった。平成11年に行われた介助犬研究(大林ら 2000)でも同じ不安があげられていることより、6年経ってもまだ対策が講じられておらず、障害者にとっては未だに情報不足であり相談できる場所が整っていないといえる。そして、介助犬を希望する人の大半は“精神的な支え”を求めていた。“精神的な支え”は“犬の世話”を通してもたらされるものであり、“犬の世話”自体が補助犬の意義でもある。そこで、“犬の世話”も含めた介助犬からもたらされる精神的な恩恵など、広い意味で介助犬についての正しい情報を十分に障害者に伝えていくことが必要である。

 

2006 HARs 12th. 学術大会
演題一覧  •  本発表の詳細
 次演者の抄録