3.26 一般口演 H

長野県松本市内における地域猫の取り組み
−行政と市民ボランティアによる共同作業(コムキャット)の成果−

岡田英二
Eiji Okada

動物愛護ボランティア「ねこの会」/長野県動物愛護会松塩筑支部
山田敏子二1)2)、林一郎2)、北嶋麻子3)、今村睦4)、金井真佐三4)
Toshiko Yamada、Ichiro hayashi、Asako Kitajima、Mutsumi Imamura、Masami Kanai
1)動物愛護ボランティア「ねこの会」、2)長野県動物愛護会松塩筑支部、3)長野県松本保健所、4)長野県動物愛護センター


1.はじめに
近年、猫に対する苦情が社会的問題として増加の傾向を示しているが、猫の駆除によって問題解決を図るのではなく、動物愛護と虐待防止の観点から猫と人との共生を目指すことが必要となり、共生の手段や苦情の解決法として地域猫活動が知られるようになった。長野県松本市内のある公園ではおよそ10〜30頭の猫が毎年捨てられ、常に30頭くらいが地域周辺も含めて生息してきた。我々はその現場において行政と市民ボランティアが共同して行う地域猫活動を4年間行い、当初いた猫の総数を1/6の5頭まで現在減少させた。ここでは地域猫活動の実践過程と内容、地域における住民感情と生息猫総数の変遷について報告する。
2.活動の経緯
この地域猫活動の現場は長野県松本市市街地東端に位置する「あがたの森公園」で、長年、周辺住民として捨て猫等の保護と動物遺棄防止を行っていた。しかし、個人的な立場での活動に限界が生じ、個人や小規模団体がお互いを補完し合えるようH13.4「ねこの会」を結成した。一方、長野県ではH14年度より地域ねこ共生モデル事業を開始することが決まり、犬のしつけ方等を主に活動していた長野県動物愛護会松塩筑支部は問題解決の対応組織としてねこ部会を新設した。ねこの会はこの部会へ参入し、中心的に事業推進を図り、これが長野県における行政と市民が取組んだ最初の地域猫活動となった。
3.活動の内容
地域内に棲む所有者のいない猫を適正管理し、繁殖防止により野良猫数を制御して猫を介在とした衛生・生活環境上のトラブルを回避し、人と猫が共生する地域社会の構築を目的に、動物愛護センターでは不妊去勢手術と個体識別標の装着、保健所では市町村と地域の連絡調整、地域ではボランティアが定時定点による給餌給水・排泄物処理清掃、猫の生息調査、捕獲、センターへの搬出入、保健所と共同して自治会への住民合意形成など明確な役割を分担し、活動を行った。また管理保全のための最低限規約として「地域猫ルール」を作成・実施した。
4.成果とまとめ
不妊去勢手術により、既存の猫による繁殖が生息数増加をもたらすことがなくなり、31頭いた猫総数が開始から3年後には半減し、現在は5頭にまで減少した。手術の効果により猫の性格が穏和になり、争い等の喧噪や不快な仕草への苦情等が減少した。また、給餌法の効果で人目につく俳諧行為が減り環境が美化され、猫嫌い派の住民感情も緩和した。県との共同事業ということでボランティアの信用性が増し、活動が容易になり、他地域からも活動要請が寄せられた。

 

2006 HARs 12th. 学術大会
演題一覧  •  本発表の詳細
 次演者の抄録