「認知症高齢者グループホームにおける犬を用いた環境支援」
金子清香,井戸和宏,宮田真由美,羽田野政治
Kaneko Sayaka, Ido
Kazuhiro,Miyata Mayumi,Hatano Masaharu
株式会社横浜福祉研究所 認知症高齢者研究室
はじめに
認知症高齢者は脳の器質的な障害により、身体機能・認知機能・情緒機能が低下するため、環境の変化による影響を受けやすい。環境への不適応が様々な中核症状・随伴症状を悪化させるため、適切な環境の整備がケアにおいて重要であることが指摘されている。『認知症高齢者環境支援のための指針』(PEAP 日本版3)は、施設に入居している認知症高齢者に対して、広い意味での環境支援を行うための指針となっている。横浜福祉研究所附属グループホームでは、Kyomation
Care(医療・看護・介護を融合した対人援助)を基本としたケアに取り組み、栄養・運動・薬物・非薬物療法を実施している。現在、非薬物療法の一つとして3ユニット(9名/ユニット)で犬を飼育している。犬がいるという環境が、クライアントや介護者にどのような影響を与えているのかを明らかにするために、質問紙調査と事例検討を行った。
仮説
『認知症高齢者環境支援のための指針』
@ 見当識への支援
A 機能的な能力への支援
B 環境における刺激の質と調整
C 安全と安心への支援
D 生活の継続性への支援
E 自己選択への支援
F プライバシーの確保
G 入居者とのふれあいの促進
<これらの指針に沿って期待される効果>
・認知力の向上
・機能的疾患への効果
・生活の刺激効果
・リラックス効果
・生活感の演出
・自己決定の促進
・個別化
・他者とのコミュニケーションの促進
方法
飼育年数/ユニット@A(シーズー):2ヶ月
ユニットB(ミニチュアダックス):2年9ヶ月 (2006.1現在)
・ 職員への質問紙調査(担当クライアントの観察評価と自己回答)
・ クライアントのケア記録(状態,発言内容)
結果
質問紙調査では、クライアント観察評価の7割以上で犬によるマイナス影響は認められなかった。職員では、犬の効果を肯定する回答が7割以上であるのに対して、衛生面の危惧が過半数であった。環境支援として犬の効果を認識しながらも、しつけや世話の問題点が指摘されている。また、器質性気分障害・人格変化を持つクライアントにおいて、改善傾向が認められた。認知症高齢者が、環境に適応しやすい状態を促す犬の効果について、事例を交えて発表する。
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