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ペットロス:「抑うつ」と「生活状況」の関連性 相馬隆介,横山章光 【序論】 近年、ペットブームによりペットの飼育数が増加している。それに伴い、動物を失う機会も増加をしている。また、核家族化、高年齢化、晩婚化、少子化などによってペットへの愛情のかけ方が強くなっており、ペットを失うことにより深い悲嘆反応を経験する飼い主も増えている。 【目的】 本研究では、どのような飼い主がペットロスの状態に陥りやすいのかを明らかにする事を目的とし、飼育環境と生活上でのストレスによる、ペット喪失によるうつの深さとの関連性の調査を行った。 【方法】 調査はアンケート方式による。ペット喪失によるうつの深さの測定には、自己記入式による抑うつ傾向を評価するための質問紙である、ズンクの自己評価抑うつ尺度(SDS)用い、要因として、年齢・性別・家族構成・飼育期間・ペットに対しての考え方・ペットを失った前後に起こったストレス因子などを抽出した。アンケートは神奈川県の動物病院で、主にペットを失った経験がある飼い主を対象とした。 【結果】 アンケートの回収率は78%(39/50)で、回答者の平均年齢は39.2歳。男性16名、女性23名だった。本調査では、「ズンクの自己評価抑うつ尺度」を7段階に分類した。その結果、抑うつ尺度(抑うつ傾向)が高くなるに伴い、該当者の平均年齢が低く、女性の比率が高くなっていた。また、抑うつ尺度が高くなるに伴い、予測できない原因でペットを失った飼い主の割合が増加しており、次のペットを飼い始めるまでに長い期間を要していた。ペットを失った際の他のペットの飼育の有無では、抑うつ尺度が高くなるに伴い他にペットの飼育をしていなかった飼い主の割合が増加しており、有意に差があった(P<0.05)。その他、性別では女性が男性よりも抑うつ尺度が高く、生活状況では失った当時1人暮らしだった飼い主が3人以上の家族と共に生活をしていた飼い主よりも抑うつ尺度が高く、それぞれ有意に差があった(P<0.01)。 【考察】 抑うつ尺度が低得点を記録した飼い主は、老衰など予測できる喪失により、ペットを失うことに対する準備期間があった、他のペットが心の支えとなっていたために、深い悲嘆を経験しなかったと考えられる。また、抑うつ尺度が高得点を記録した飼い主は、事故・行方不明など予測できない喪失により、ペットを失うことに対する準備期間がなかったこと、1匹のペットに対する依存が強かった為に、深い悲嘆を経験したと考えることが出来る。以上の結果より、性別、失う原因が予測できるか否か、同時に飼育しているほかのペットの有無、生活状況をペット喪失による深い悲嘆反応の要因として明らかにすることが出来た。今回の調査では明らかにすることが出来なかった、経験年齢による悲嘆反応の違いは今後の調査により明らかにしていきたい。
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2006 HARs 12th. 学術大会 |