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脳性麻痺児の乗馬による 木村純一, 柏村文郎 【目的】乗馬が心身の治療に役に立つという考えは古く、ギリシア時代から存在する。欧米では障害をもった人たちのリハビリとして乗馬療法が認知されており、脳性麻痺児に対する乗馬の治療効果について多くの研究成果が報告されている。脳性麻痺の症状には筋緊張や痙攣が現れることが多く、乗馬の姿勢が筋緊張の緩和やバランスの維持に効果があると考えられている。帯広畜産大学では2004年より学生ボランティアグループが中心となって障害者乗馬活動を行っている。昨年、脳性麻痺児の乗馬前後の関節可動域を測定し、乗馬後に上肢下肢の機能が改善されることを本学会で報告した。本研究では身体機能の他、日常生活動作などへの効果とその効果の持続性を調べた。 【方法】被験者として帯広市内の北斗病院に通院している脳性麻痺児3名を対象とした(I君8歳:痙直型両麻痺。S君8歳:痙直型四肢麻痺。Tさん10歳:痙直とアテトーゼの混合型四肢麻痺)。使用した馬は帯広畜産大学で飼育しているサラブレッド種2頭と北海道和種2頭であった。調査方法は、被験者の親に調査用紙を配り、毎日の様子を普段より良いか悪いか5段階のスコアで記録してもらった。調査内容は股関節の柔軟さや姿勢の維持など身体機能を7項目、食事や更衣など日常生活動作を5項目、声の大きさや声の明るさなど言語関連を4項目、明るさや落ち着きなど精神状態を3項目とした。調査期間は2005年7月23日から9月2日までの42日間であった。この間、帯広畜産大学で乗馬をした日は3名とも8日間であった。病院でリハビリをした日は被験者間で異なりI君は5日間、Tさんは12日間、S君は15日間であった。統計分析はSAS のGLMプロシジャで行った。スコアに影響する可能性のある要因として、乗馬とリハビリの当日、翌日、2日後、3日以降の効果について分析した。 【結果】身体機能では、乗馬日は7項目すべて、リハビリ日は4項目で、乗馬もリハビリも行わなかった日よりスコアは有意に高かった(P<0.05)。また、乗馬日の身体機能改善効果はリハビリ日よりも高い傾向にあった。日常生活動作では、乗馬日が更衣上半身と更衣下半身の2項目でスコアは有意に高かった(P<0.05)。言語関連と精神的状態では、乗馬とリハビリともにスコアの上昇はみられなかったが、乗馬日では寝つきが良い傾向が認められた(P=0.07)。また身体機能の5項目において、乗馬翌日と乗馬2日後、3日以降のあいだに有意差(P<0.05)があったことから乗馬の効果は翌日まで持続することが示された。
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2006 HARs 12th. 学術大会 |