馬と出会った子どもたち
大和八重美, 吉田孚
Yaemi Yamato, Makoto Yoshida
ポニースクール「だいら」・佐賀県
私は昨年までポニーのいる学校に勤務していました。「学校で馬を飼おう。そうすれば、子どもの心に美しいものが育つ。」という確信をもってポニーを導入されたのは、吉田孚先生です。私はそこで8年間を過ごしました。今日は、去年の春卒業した子どもたちの卒業文集を中心に話したいと思います。
@ 入学当初、スムーズに学校へ来ることができなかったM子。警戒心が強く、動物に近づくこともできなかった女の子ですが、今では駆け足を楽しんでいます。
A 泣き虫、怖がりのS子。ちょっとした傾斜を飛び降りることも怖がっていました。虫もウサギもさわれません。そんな彼女も変わりました。
B 転校生のY男。少し複雑な家庭環境のせいもあってか、うまくみんなととけ込めずにいたのですが…。彼の作文に、人間の成長にとって心のよりどころがどんなに大切なものであるかということが、表れているように思います。
C しっかり者(?)のM姫。真面目でがんばり屋。口数の少ない彼女は、それまで自分から友達に何かを教えたりすることはなかったのですが、乗馬技術のうまさから友達にアドバイスすることが多くなり、考え方にも広がりが出てきます。
D 運動神経抜群のK男。女子からの期待がいっぱいの彼ですが、実はミミズもさわれない。それが、ポニーを乗りこなし、たくましさを手に入れていきました。
馬とのふれあいを通して子どもたちはいろんなことを学び、成長しています。でも、もっと大切なのは、馬だけではなくて、馬の後ろにいる大人です。大人の姿から子どもたちは多くのことを感じ取り学んでいるのだと思います。馬とのふれあいの中で、子どもたちは、ほめられる、おこられる、教えてもらう、そういったことを必要と感じたときに必要な分だけ与えられていると思います。だから彼らは達成感とともに優しさやたくましさを手に入れることができたのではないでしょうか。子どもたちは、馬からも多くのことを学びますが、cそれよりもっと多くを人から学んでいるのです。
重い悲しみ。どの子も共通してマッドレーの死について書いています。刻々と迫る死に立ち向かうマッドレーの姿は、子どもたちの目に焼きつき、心に多くのものを残してくれました。そこで見せる大人の思いっきりの悲しみの姿もまた、子どもたちの目に焼きつきました。子どもたちは自分の悲しみを吉田先生の悲しみと置き換えることで、吉田先生の悲しみの深さを推し量っているようでした。
そんな中で迎えた「うれしい、うれしい!」出来事が、子馬「チャロ」の誕生でした。とりわけうれしそうな吉田先生の顔を見て、子どもたちは心からホッとしたようで、かんかん照りの7月、子馬の誕生集会を開いたのです。
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