3.19/20 ポスター O

乗馬による脳性麻痺児の
身体機能改善とその評価法の検討

柏村文郎・牡野正佳・古村圭子
Fumiro KASHIWAMURA, Masayoshi MORINO, Keiko FURUMURA


(
帯広畜産大学・北海道)


【目的】
  乗馬は精神的または身体的に障害を持った人に対してセラピー効果があると言われており、欧米では障害者の治療行為としてすでに定着している。Bertoti(1988)などの報告をみると、脳性麻痺児に対する治療効果が顕著であったことが示されている。本研究の目的は、乗馬による脳性麻痺児の身体機能改善の効果を確認すること、およびそのような効果の客観的評価法について検討することである。

【方法】
  被験者として脳性麻痺児2名(S君:痙直型四肢麻痺の7歳男児、Tさん:アテトーゼ混合型四肢麻痺の9歳女児)を対象とした。両児童とも自立歩行は困難であった。使用した馬はサラブレッド種1頭(雌10歳)と北海道和種馬2頭(雌10歳、14歳)であった。乗馬レッスンは2004年6月〜10月の間に12回行なった。1回のレッスンは約30分間で、上体を前後に倒す動作、片手または両手を水平または上に挙げる動作、地上にいる人に声をかけられたらその方向に体をねじる動作などを組み合わせて行った。またレッスン終了前の10分間は馬場から出て大学構内の道路で外乗を行った。1)関節可動域の測定:乗馬に慣れてきた頃に関節可動域の測定を乗馬レッスンの前後に行なった。測定は被験者のリハビリを担当している理学療法士に依頼した。測定部位は肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足関節であった。測定項目は屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋であった。各部位について測定した合計は一人17点となった。2)乗馬運動能力スコア:本研究で独自に脳性麻痺児用の乗馬運動能力スコアを試作した。評価項目は、馬上でのバランス、上体の動き、上肢運動など10項目とし、それぞれ5段階で評点することにした。評点の実施は、スコア作成者がレッスン当日に行い、協力者2名にはレッスンを収録したビデオ録画から評価してもらった。

【結果】
  被験者の親からは、乗馬レッスン後には児童の体が柔軟になり夜もよく眠れるようになるとのコメントをいただいた。関節可動域の測定では、両児童とも上肢の柔軟性は全体的に改善がみられた。特に肩関節の屈曲、外転、外旋への効果が顕著であった。下肢もほぼ全体的に改善され、股関節の屈曲、伸展、膝関節の屈曲、足関節の伸展に効果がみられた。乗馬運動能力スコアでは、評価者間にばらつきが見られた。バランスの項目では着目部位が曖昧であったと思われる。被験者の上肢の運動機能には左右差があったため、左右まとめてスコアをつける今回の方法には難点がみられた。また、痙直型とアテトーゼ混合型を単一の基準で評価することの問題も明らかとなった。今後は、上体および上肢で左右別のスコアをつけること、また評価者間のばらつきを小さくするために、より具体的な評価ガイドラインの作成とビデオ録画を利用した評価者間の事前の目あわせが必要であると思われた。

 

2005 HARs 11th. 学術大会
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