3.19/20 ポスター B |
非薬物療法(AAT:動物介在療法)による効果T 中川 亜耶人1) 金井 美樹1) 小山田 和美1) 市 桂子1) 三瀬 正幸2) 渡邊 学2) 森 博俊2) 牧山 涼子2) <はじめに> (有)なかよし生き物倶楽部プチZOO(以下プチZOO)は、(社)青山里会 身体障害者療護施設「小山田苑」に入所中の20名を対象に動物訪問活動(AAA)を行い、小山田苑副施設長・作業療法士・主任ケアワーカー・プチZOO園長等(以下合同チーム)と協議し、Y氏のおむつ交換時の痛みの軽減と強制把握の緩和を目的に、ウサギの触れ合い・イヌとの遊びといったAATプログラムを組み実施した。その結果を報告する。 1.対象者の概要 Y氏・男性・36歳。髄膜炎による四肢体幹機能障害1種1級、障害者程度区分A。昭和60年の自動車自損事故をきっかけに平成13年髄膜炎を発症。重度の四肢体幹機能障害と意識障害、嚥下障害から胃ろう増設、脳全般・身体麻痺・拘縮・言語等の複合障害をもち、平成15年1月、病院より小山田苑入所。 2.AAA中に見られた変化とAATの目的 AAA開始直後から笑顔が見られ、我々の誘導により動物を優しく撫でる事が出来た。その間強制把握・筋緊張の緩和が見られた。その後オムツ交換時に動物の話題をすると痛みの訴えが少ない様子が観察された事から、AATの目的を「○おむつ交換時の痛みの軽減 ○強制把握の緩和 ○興奮の抑制」とした。 3.AAT実施方法 (第一段階)週1回デイルームにてウサギと触れ合い・餌やり。 (第二段階)屋外(中庭)にて、イヌと担当者が遊ぶ様子を眺めたり、ボール投げ等をして遊ぶ。 4.評価 T.合同チームは月1回会議を行い、Y氏のAAT実施内容について評価をし、段階的にQOLを高めるように作業内容を引き上げた。 (第一段階)ウサギと目線も合い笑顔が見られた。腕や指の緊張が弛緩した状態で我々の誘導により優し くウサギを撫でる事が出来た。全4回実施。 (第二段階)開始直後、硬い表情が笑顔になり楽しんでいた。イヌがお手をすると自ら腕を下へ伸ばし、 イヌの前足を握った。イヌの動きがおかしい時には声を出して笑いながら車椅子をたたく等、普段見ら れない行動が見られた。車椅子の背もたれを起こし、動物が見え易いようにしたが特に痛がらず。 U.AAT実施前の3/18〜3/31とAAT実施中の4/1〜6/9の間、1日6回のおむつ交換時の痛みと強制把握の状況をケアワーカー(CW)が記録した(以下の5段階評価)。 痛みについて 1−痛みを感じていない 2−顔をしかめる 3−「痛い」と訴える 4−何回も訴える 5−暴れる 強制把握について 1−サークルを持っていない 2−1回の声掛けで離す 3−2〜3回の声掛けで離す 4−かなりの声掛けで離す 5−声掛けしても離さない 5.結果 痛みについて 今回の5段階評価方法は、Y氏の表情の読み取り方により、CWの個人差が有ると思われた為、内容の近似した「A:痛みを感じない・顔をしかめる」と「B:訴える・何回も訴える・暴れる」の2項目に分類してデータをまとめた所AATの回数を重ねる程「A:痛みを感じない等」の割合が増えた。 強制把握について AATの回数を重ねる程おむつ交換時に「サークルをもっていない割合」が増加した。 6.まとめ/考察 今回AATを実施した結果、動物と触れ合う事でY氏の痛みの訴えや強制把握が緩和されたと言える。これは動物の訪問がY氏の生活に楽しみをもたらすと同時に、Y氏の日頃抱えている様々な苦痛の軽減に作用したと思われる。又、我々がAATを実施した事によりY氏の可能性が見出され、離床の習慣や屋外への散歩等を増やす事が出来た。様々な複合障害をもつY氏の生活に、変化をもたらし少しでも笑顔の増える生活を送れるようにする事は、難しいように思われがちである。しかし今回の様に、動物を媒体とした事でY氏の日常に気づきの目を向け、自然な形でQOLの向上につなげる事は可能性として充分である。我々は今後も動物との触れ合いを通じて、介護・福祉その他あらゆる現場において求められる新たな動物の活用に役立てられればと思い努力していきたい。
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2005 HARs 11th. 学術大会 |