3.19/20 ポスター A

東京都動物愛護推進総合基本計画の策定について

打越 綾子
Ayako UCHIKOSHI


(
成城大学法学部(行政学・地方自治論担当)・東京都)


  個別具体的な行政活動の集合体は、どのような仕掛けによって、一定の自律的な体系性を持つ政策分野としての認知を受けるのであろうか。例えば、動物を対象とする諸々の個別事業は、如何にして動物愛護管理政策という一定の自律性を持つ政策分野として成立するのか。本報告では、その仕掛けの一つとして「一定の政策分野の課題を体系化して整理し、長期的な活動目標を掲げる計画」としての「政策分野別基本計画」に注目し、政策・施策・事業の体系化が行われる構造と過程を検討しようとするものである。事例としては主に愛玩動物を対象とした「東京都動物愛護推進総合基本計画(通称:ハルス・プラン)」(2004年2月に策定)を検討する。
 これまで動物愛護管理行政は、公衆衛生管理行政の一部分として位置づけられてきており、捕獲収容業務や苦情対応など現場でのアドホックな事業が積み重ねられるばかりであった。行政職員同士の間でも目指すべき方向性を定めて事業を体系化しようという動きは長らく起こらなかった。
 しかし、未曾有のペットブームに伴い、人と動物の絆が強まる一方で、逆に人間にとっても動物にとっても望ましからぬ状況が発生しつつある。公衆衛生の目的に照らした対応を超えて、動物の福祉を考えるとともに社会全体の調和を実現する政策とは如何なるものであるか、それをどのように構築していくか、今後さらに一層議論を深める必要があろう。「政策分野別基本計画」は、その策定に向けて多様な関係者が議論することによって、新たなアジェンダを盛り込み、政策手段を体系化する契機となる。東京都のハルス・プランは全国的にもリーディングケースとして重要な意味を持っている。

  はじめに
  1 動物を取りまく法制度
  2 ペットブームをめぐる政策課題と東京都の対応
  3 組織と職員構成
  4 ハルス・プランの策定過程
  5 ハルス・プランの内容
  残された課題

 なお、本報告の目的は、これまでの日本において社会科学がそれほど触れてこなかった動物をめぐる政策分野について、遅ればせながら政治学・行政学・政策学の知見を用いて分析することである。
 動物愛護管理をめぐる行政機構内の組織間関係や政策形成過程について、社会科学の専門的な見地から研究する論文は現時点ではほとんどない。その帰結として、動物に関する政策をめぐる改革論議が、政治過程の内実や現場の自治体行政機構の課題を看過したまま進行する危険性がある 。
 行政機構内部の組織的課題・財政状況の如何等について分析する行政学や政策過程論におけるアジェンダ・セッティング論は、現在の制度改革に関して一定の貢献ができると思われる。

 

2005 HARs 11th. 学術大会
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