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「動物介在箱庭」から読み取れる児童の動物観について 田中美佑季 渡辺祥平 花園誠 【緒言】 帝京科学大学アニマルサイエンス学科では「動物福祉」を学生に教授する一法として、ハムスターを題材にした「環境エンリッチメント」の実習を実施している。我々は、本実習の実行を重ねる過程でこの実習の手法は児童に対する「動物福祉」の指導にも活用できるのではないかとの着想に至り、一昨年度よりそのための検討を開始した。そして、心理カウンセリングに用いられる「箱庭」の手法を参照にして「動物介在箱庭」を新たに創案した。今回は、複数のイベント会場での実践例について報告するとともに、事後の児童との会話と児童に対するアンケートを参照にして読み取った「動物介在箱庭」に映し出された児童の動物観についての考察を述べたい。 【材料と方法】 今回報告する「動物介在箱庭」は、9月23日、山梨県動物愛護指導センターに設けられた「動物愛護デー」のイベント会場と、11月20・21日の両日、山梨県立科学館に設けられた「青少年のための科学の祭典・山梨大会」のイベント会場で実践されたものである。実践例の総数は115件。「動物愛護デー」・「青少年のための科学の祭典・山梨大会」の両イベントには教員1名、学生9名が参加した。 今回の試みでは、「箱庭療法」が取りそろえる玩具類を参照、以下に記す7群のものについても用意した。1. 人間の人形・擬人化したネズミの人形・家畜、2. 野生動物、3. 乗り物、4. 建造物、5. 自然系(花・草・木など)、6. 食べ物系 ( 食器・レプリカのケーキ・レプリカのパスタなど )、7. ハムスターの飼育用具。 実施にあたっては、児童に「ハムスターの世界を作ってみよう」というテーマを与える以外には一切指示を与えることはなく、箱庭の作製は全く児童の意のままに任せた。作製過程の一部始終と、学生との間で交わされた会話の全てについてはデジタルビデオカメラに記録、後日の解析に備えた。箱庭完成後には児童とその保護者に対して、年齢および動物の飼育歴・好き嫌い等に関する簡単なアンケート調査を行った。 【結果】 全ての児童が箱庭に対峙すると、逡巡することなく色々な玩具類を手にとっては次々にその中に配置していった。児童の手による工夫は、前回の実践でも観察されたように、立体的に構築するもの、平面的に構築するものなど様々であった。また、玩具類の取捨選択とその配置には、ハムスター飼育用具の取捨選択以上のバリエーションがあり、そこから児童の内面が窺えるようでもあり、非常に興味深かった。それは記録された学生との会話内容からも窺えた。 【考察】 これまでの実践例の考察から「動物介在箱庭」には児童の動物観 (本研究の場合「ハムスター観」)が投影されている可能性が考えられていた。今回の作品を制作後の会話やアンケートを参照に解析したところ、ハムスターに対して「肯定的」・「否定的」・「無関心的」態度があること、そして、ハムスターを「擬人視」もしくは「動物視」する態度と、どちらでもない「中間視」する態度もあることが推察された。これらについてはなお実践を重ねていく必要はあるが、「動物介在箱庭」は児童の動物観を調べるために有効と結論する。今後の研究の進展に期待したい。 |
2005 HARs 11th. 学術大会 |