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多摩動物公園昆虫館における教育プログラム開発の試み
堀内貴充 花園美樹 横井恵 荒井雄大 大塚白実 成瀬淳 【緒言】 帝京科学大学の動物園研究部は、多摩動物公園昆虫館を舞台にして児童・保護者に対する教育普及活動を展開している。活動当初は館内の「グローワーム (光る幼虫) コーナー」の解説と児童に対する昆虫工作の指導が主たる内容だったが、昆虫に対する興味を持ってもらうための契機になればとの考えから、動物園研究部の有志が中心となり昆虫のお絵かきと解説から成る「おえかきっず!(お絵かき+Kids からの造語。)」と命名の児童向けのプログラムを開発、2004年4月から実践を開始した。このプログラムは児童のみならず保護者にも概ね好評であったが、昨秋10月からは児童に対する教育効果の向上を考え、新たに紙芝居をプログラムに導入した。本報告では改良された「おえかきっず」プログラムの詳細と、導入した紙芝居の効果についての検証結果について述べたい。 【材料と方法】 本プログラムは園内昆虫館2階のイベントホールで、第2・4日曜日の午後1時30分から実施している。1回のプログラムに要する時間はおよそ1時間弱で、運営に必要なスタッフは10名程度である。改良プログラムは全部で4つのセクションから成り、参加者が揃うまでの待ち時間に実施される「ふれあい (ヘビ・カエルを使用)」10分間・「紙芝居 (含むクイズ)」10分間・「おえかき」30分間・「解説」10分間で構成されている。紙芝居は児童向けの絵本「バッタのピョンコちゃん」から著者の許可を得て転用・作製した。「おえかき」には昆虫館で繁殖しているトノサマバッタを使用、クレヨン1セットを児童に貸し与え、1枚の厚紙 (B4サイズ) の左右に現物 (トノサマバッタ) を「見ないで」と「見て」の2回の「おえかき」に挑戦してもらった。 今回は紙芝居の効果を検証するために、午前・午後の「おえかきっず」を、午前は紙芝居「有り」で午後は「無し」で実施、児童の行動を1分間隔で瞬間サンプリングした。行動のチェック項目は考える・描く・塗る・触る・話す・見る の全部で6つである。行動観察後には調査協力の学生に担当児童の様子についてアンケート (含む自由記述) に答えてもらった。 【結果】 学生アンケートによると、「おえかき」の開始時点での児童のバッタに対する興味は、紙芝居を導入したほうがより強いという評価であり、「児童のテンションが高くなる」「スムーズにバッタを描きはじめられる」「飽きてしまう児童が少ない」などが紙芝居導入の効果のようであった。しかし、「現物 (トノサマバッタ)を目の前にした時の関心」は、紙芝居がないほうがより強いようであった。瞬間サンプリングによる行動チェックの結果では、描くことに要する時間は紙芝居がないほうがより長くなることが示され、バッタを描くことに逡巡する児童の様子が窺えた。 【考察】 この検証結果からは紙芝居導入の効果として「プログラムにエンターテイメント性が加味される」「児童を飽きさせずイベント進行がスムーズになる」「プログラムの難易度を下げる」などが考えられた。今はテレビゲームが児童の遊びとして定着、コンピューター・グラフィックスが全盛の時代である。しかし、我々は今回の検証により「紙芝居の良さ」について認識を新たにした。今後も「紙芝居の良さ」生かしつつ、このプログラムをより一層充実させて行きたいと考えている。 |
2005 HARs 11th. 学術大会 |