3.19 一般口演 C

地域の河川を利用した
「いのち」を実感させる環境教育の試みについて

村木佑実 横井恵 小檜山祐介 溝端真也 花園美樹 田邉かえで 花園誠
Yumi Muraki, Megumi Yokoi, Yusuke Kobiyama, Shinya Mizobata,
Miki Hanazono, Kaede Tanabe, Makoto Hanazono


帝京科学大学 理工学部 アニマルサイエンス学科・山梨県


【緒言】
我々は地域の小学校と連携し、生活科や総合的な学習の時間などで動物介在活動・教育を実践、児童に「いのち」を実感させるための様々なプログラム開発を試みている。しかし、「いのち」に対する理解を深めるには飼育された (囲われた) 動物のみを教材に使うのでは不十分であり、野生下でたくましく生きる動物の姿を知ることもまた真の理解には必要と考え、地域の自然の豊かさを活用した野外環境教育プログラムの開発に着手した。本学の立地する上野原町は新宿から電車で僅か80分の距離であるが、一歩山に分け入るとそこにはサル・イノシシ・ムササビなどが、町内の川にはホタル・サワガニ・カジカガエルなどが棲息する自然豊かな町である。本研究では「いのち」を実感させるための環境教育プログラム開発の舞台として地域の河川に着目、近隣の小学校の協力を仰ぎつつその有用性について検討を加えることとした。

【材料と方法】
対象は、上野原町立大鶴小学校の第3・4学年30名である。大鶴小学校の近くには、徒歩で5分程度の距離に幅10m程の小河川・仲間川が流れている。仲間川は一部護岸工事がなされているが、アブラハヤなどの小魚、オタマジャクシ、多種多様な水生昆虫類が棲息する「いのち」豊かな小河川である。プログラムは2004年7月14・15日の両日に、2・3校時の90分間づつ実施した。学童は小学校の教諭にお願いして3・4年生を均等に混ぜた6人づつの班編成とし、1班につき1名大学生が入った。今回開発した2日間のプログラムの概要は以下の通り。
第1日目「船作り」 共同作業をすることで班内のコミュニケーションを活性化させるという狙いと、川に学童を「自然に誘い込む」ために船を作るという狙いもあった。船を時間内に協力して完成させ、船を川に流し楽しんでもらった。
第2日目「川遊び」 仲間川大走査線―指名手配犯をさがせっっ!!―と題し、動物を「いじめない・傷つけない・殺さない」のルールを徹底させつつ川に住む動物を探して捕まえ、貸与した図鑑を頼りにみんなで協力して種類を調べさせる。捕まえた動物には点数を配分して総合得点を競わせ、調べ終わった動物は大学生の介助のもと全て川に返した。
事前と事後で河川に対する児童の意識がどのように変化したかを、アンケートならびに河川をテーマとした絵を描かせることで評価した。

【結果】
終了後の学童の感想は、「楽しかった」「面白かった」というものがほとんどで、全員がまた大学生と遊びたいと回答した。また川に行きたいという学童もいた。事後の絵からは川の中に色々な動物を書き込むようになるなどの変化が現れていた。保護者と教諭のアンケートには「大学生との交流が良い経験だった」という回答が共通していた。

【考察】
事後に川の絵に動物が描きこまれていたことから、河川を動物の棲息地として認識させる狙いは概ね成功したと考えている。また、今回の環境教育プログラムには、その導入部分に意識的に「遊び (船レース)」を盛り込んだが、学童には大好評であり、学童たちは自然に川へと誘われた。このような「あそび⇒まなび」の組み立ては学童に対する環境教育の導入として有効なのかもしれないと我々は考えている。

2005 HARs 11th. 学術大会
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