3.19 一般口演 A

肛門手術術後の疼痛緩和におけるAATの役割
―その2.音楽療法との対比―

高野正博
Masahiro TAKANO
(
大腸肛門病センター 高野病院・熊本県)


はじめに
痔の手術は昔から痛いものと恐れられてきた。その背景には「痛いだろう」という恐怖心が痛みを増幅させるという精神的要因があり鎮痛剤を用いるが十分でない。そこで我々は、AATによるリラックス効果が術後の痛みや不安、緊張感を和らげ、鎮痛に役立つのではないかと臨床研究を行ったところ有意の差をもって確かめることができ、AATの基礎的データーが得られたと思われ、2年前の本会でも報告した。

目的

そこで今回は、前回の結果を基に、complementary and alternative medicine(CAM,補完・代替医療)の中でも特に普及している音楽療法との対比を試みたいと思い、動物と音楽を対照にして行ってみたのでその結果を報告する。なお、今回の音楽療法は音楽療法士の指導を受け、体感音響装置(通称、ボディーソニック)を用いた受動的音楽療法で、以下音楽療法と言う。
音楽療法は、好みの音楽を聴くことで気持ちが落ち着き、痛みや不安も和らぐという効果がもたらされることから、医療現場でもストレスや緊張からの離脱、末期医療におけるペインコントロール等に応用されている。

対象および方法

方法は前回と同様、実験的ケーススタディーの中でも1例の成績でもevidenceとなるABデザインを用いた。あらかじめ実験協力の承諾を得ていた術後4日目の患者に対し、AはAAT、Bは音楽療法を行う。AATの方法は前回と同様とする。Bは音楽療法士の指導の下、クラシック、演歌、ポップス、リラクゼーションなど用意したCDの中から患者さんに好みの曲を選択してもらい体感音響装置で聴いてもらう。時間はAB共に30分位、組合せとして午前A・午後B、あるいは午前B・午後Aとした。評価法も前回と同様、A又はBの直前、直後、15分後、30分後、1時間後に患者が記入したVAS(visual analog scale)をもとに痛みを0〜100にスコア化し、時間経過毎の痛みをペインスコアにて評価した。同時に感想も書いてもらった。

結果

以上のことからAATと音楽療法は基本的には同じような効果を示した。AATは前回と同様、実施直後にスコアが最も低下し痛みが抑えられ、その後15分後、30分後、1時間後と痛みは緩やかにもとに戻ったが、直前に比べると鎮痛効果は継続していた。一方音楽療法では、ほぼ同じスケールからスタートして同じような下降線を描き痛みが抑えられたが、30分・1時間後に痛みが戻る傾向があり、ペインスコアも全体的に高かった。

結語
AATと音楽療法は肛門術後の疼痛に対して同様な有効性を示したが、今回はその永続性においてはAATの方が優れているという傾向を示した。その理由について考察を加えて発表する。

 

 

2005 HARs 11th, 学術大会
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