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“地域力”で解決を探る
中川 芳江 動物愛護を巡る諸課題を「地域」「共同性」の視点で捉え直し産学官民の協働によって解決を目指す、という基本コンセプトを昨年提示した。多くの共感を得たこのコンセプトを元に、今年は更に進んで「地域」で解決を目指す際の道筋を議論したい。 発生する多様な状況をある特定の人々やセクター(例えば、自治体、動物愛護団体)の“がんばり”のみで解決を目指す方法は、限界に達している。そこで、より多様な人々の関わりによって解決を目指す協働の方法が求められている。 では、協働で取り組むために、どうすればよいのか。 その第一歩は「動物愛護」で表現される様々な課題を整理し共通理解を創ることである。例えば次のような整理は重要である。@発生している事象は何か、Aその事象から生じる問題は何か、Bその問題の直接的な原因は何か、C本質的な原因は何か、である。飼育放棄、殺処分、マナー、猫の苦情、虐待等々の事象についてこの整理を多様な人々の間で共有していくこと、これが課題の共通理解を「創る」ことである。次の一歩は、この共通理解を基に肝心の解決策を考案する。ここが智恵の出しどころである。そして、解決策の実施。それぞれの人々・セクターの特性・個性等を活かしてさまざまな実施が可能である。共通理解から出発する限り、相違は歓迎される多様性である。 共通理解を創れる人々が、お互いの存在を認め合える関係の中で行動し始めた時に、地域の持つ力“地域力”が機能するだろう。のっぺらぼうな状態にある「行政」「愛護団体」「地域住民」「学術」「企業」ではなく、共通理解を下敷きにした人々の顔が見え心が伝わる中でこそ、様々な人々が関わる地域での解決策が前進すると考える。 報告事例と、「地域社会の動物愛護に関する産学官民協働会議」での議論の成果も手がかりに、シンポジムを共通理解を創るひとつの場としたい。 |
2004 HARs 学術大会 |