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行政が関わる「動物愛護」問題について
細川 有里子 われわれ行政職員が直面する問題には、動物の不適正な飼い方や野犬等の収容、飼えなくなった犬・ネコの引き取りと殺処分などがある。これらの問題に対して、個別に対症療法的な対応をするだけでは問題は無くならない。その根本原因を認識し対応することで、問題発生の予防をしていく必要がある。しかし問題の原因は多岐にわたり、行政単独で取り組むことに限界を感じている。 直面する問題の一つとして、犬の鳴き声についての苦情があげられる。われわれは兵庫県の条例に基づき、現場確認を行った上で飼い主へ助言・指導を行っているが、根本的な解決にいたるケースはまれである。問題の原因として不適正な飼い方が大きな部分を占めていることが多いが、飼い主と申出者との間のコミュニケーションがうまく成されていないために問題がより大きくなってしまったケースも見られる。このような状況への対応としては、適正飼養の指導や啓発はもちろん、根本的な解決の為には地域全体がコミュニケーションのとりやすい雰囲気を作り上げることが必要だと考える。 動物愛護の問題は不適正な飼い主だけの問題ではない。多くの市民や地域にとって「人ごと」でなく、自分自身の問題であるという認識をもつためには、その原因を探り、自分が関わる部分がどこかをお互いに認識することが必要である。 地域から産学官民それぞれの立場で動物愛護へ取り組むことは、動物愛護推進員制度も含め、今後進むべき方向であると考えている。例えば、行政と市民が実施する動物愛護啓発事業の目的は同じだが、問題のとらえ方は立場により違いがありそれぞれの意義がある。このことをお互いが理解しそれぞれの立場で課題に取り組むことから動物愛護の問題解決への協働が始まると考えている。 |
2004 HARs 学術大会 |