3.21 シンポジウム第1部
動物愛護・セクターを超えた問題解決のために
−コミュニティでの産学官民協働−
「できますとも!」

森 文彰
(兵庫県動物愛護推進員・兵庫県)


 例えば、犬の糞。散歩中における犬の排泄物が処理されず道端に放置されたままになっている問題。これらは見た目の不快感や衛生上の問題だけではなく、公共の場でのマナー違反という感情的な「住民間の問題」に発展している。
これらを単に広報やチラシ等で「犬の糞は持ち帰りましょう」と呼びかけるだけでは効果はほとんど望めないが、かといって行政側ですべての糞を拾ってまわることもできない。ではどうするのか。
 ここで、「地域に密着している」私たち住民の出番である。地域の諸問題に対応するには、この強み利用した対策を立てることは非常に有効であろう。「山田さん、糞はちゃんと拾ってね」と働きかけ、それで解決するにこしたことはないが、なかなか問題意識のない住民には耳を貸してもらえない現実がある。
 そこで、地域の仲良しグループや隣保、自治会等の「集団として」糞拾いを行っていくことで当事者に地域の目を意識させ、糞を放置しにくい環境を作っていくという方法はどうだろうか。
 愛犬の散歩道ですれ違う人たちで情報交換ができる仲良しグループをつくる。動物愛護推進員は行政と住民、住民と住民との間でパイプ役となる。共通認識をもった共同体が広がる、地域の知識やマナーが向上する、その輪が広がる、問題意識のない住民も関心を持たざるを得なくなる、というふうに。
 数年前まで考えられなかった官公庁施設の全面禁煙や家庭ゴミの分別が、現在は当然のようになされていることを考えると、動物の諸問題についても決してあきらめてはならないと分かるだろう。そしてこれらを実現していくには、住民間だけではなく行政をはじめとする様々な分野の人々とのネットワークづくりが重要であるため、そのパイプ役となるべく動物愛護推進員として2年間真剣に携わってきた経験をお知らせする機会をいただけたことは非常にラッキーである。

2004 HARs 学術大会
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