3.21/22 ポスター R

共生環境エンリッチメントにおける
「ワンだぁルーム」の有用性の検討

古川 瑠実 高倉 はるか1) 花園 誠1) 南里 和紀2) 絹村 和弘2)
(
帝京科学大学バイオサイエンス学科
1)同アニマルサイエンス学科・山梨県 2)株式会社カワイ音響システム・静岡県)


【緒言】
  動物園などで飼育されている動物には「動物福祉」に配慮した飼育法として種々の「環境エンリッチメント」の工夫が成されている。我々は、ペット等の愛玩動物に対しても同様の配慮が必要との認識に立っているが、それには「環境エンリッチメント」の概念は不十分であると考えている。なぜならば、それに過度に配慮した結果、ヒトと動物との関係を疎遠にしてしまった動物園も見受けられるらである。そこで我々は、ヒトの生活空間に深く介入した愛玩動物に対して「共生環境エンリッチメント」の概念を新たに創作、ヒトにも動物にも望ましい生活空間を開発する研究に着手した。本研究では、イヌを集合住宅等で飼育した時に問題となる「音(吠え声)」と「におい」に抗するために開発された、犬用防音ケージ「ワンだぁルーム」の有用性を検討した。

【材料と方法】
ワンだぁルーム : ボックスタイプ(L) 型番PVU080(株式会社カワイ音響システム開発製品)を使用。外寸1200mm×870mm×990mm、内寸1090mm×760mm×700mmであり、小型・中型犬用に開発された。床面は衛生面に配慮して水洗いが可能で、吸・排気装置を標準装備、内壁は光触媒処理により消臭・抗菌対策が施されている。最大の特徴はその防音性能であり、扉を閉めることにより30dBの音をカット、楽器防音室と同レベルの遮音性能を誇る。(以上、ワンだぁルームのカタログより抜粋)

動物 : 防音実験には、大型犬3頭、中型犬5頭、小型犬3頭を、消臭実験には大型犬1頭を用いた。

実験1. 防音効果の測定 : ワンだぁルーム内にイヌを一頭いれ、ワンだぁルーム外壁1mからの距離で騒音計により音の強度を測定した。この時、屋外の音の強度についても窓ガラスの屋外面1mからの距離で測定した。また、遮蔽物を一切おかず、イヌから1mの距離で測定した音の強度をコントロールとした。

実験2. 消臭効果の測定 : ワンだぁルーム内に大型犬1頭を入れ、10分間放置したあと、イヌを出した。その後の臭いの推移は、臭いセンサーで測定した。光触媒の効果を確かめるため、ブラックライト、捕虫器用蛍光灯、一般家庭で使用される屋内蛍光灯の3種類をワンだぁルーム内に別個に点灯、それぞれの消臭促進効果を検討した。この時、完全暗黒状態下とワンだぁルーム外の蛍光灯下での消臭の推移についても計測、コントロールとした。

【結果】
  コントロールとして測定したイヌの音の強度は、90dBを越え、コンクリート内壁の室内では会話に支障をきたすほどであった。周波数別に解析したところ、大型犬は、低音域の強度が強く、小型犬は高音域の強度が強かった。ワンだぁルームの防音性能を周波数別に解析した結果、高音域で最もすぐれた防音効果を表した。消臭効果は、ブラックライトが最も強く、点灯後30分でイヌを入れる前のレベルに回復した。

【考察】
  都内の集合住宅では、顧客のニーズに合わせ、イヌの飼育が可能になっているところが多い。しかし、集合住宅のような密集した空間では、吠え声に起因するトラブルも多いと聞く。それにはきちんとした躾をすることがまず必要だが、それは時に飼い主の行動を制限してしまうこともある。ワンだぁルームを日常の躾とうまくかみ合わせることで、飼い主の負担を軽減、より快適な共生空間を演出すると考えている。

 

2004 HARs 学術大会
演題一覧
前演者の抄録  •  次演者の抄録