3.21/22 ポスター P

野生イルカを中心とする
海洋環境利用セラピーの受容の可能性について

 

岩重 慶一
(HAB21イルカ研究所・神奈川県
)


はじめに
 人とイルカの関係について、その1995年から行なってきた御蔵島での野生イルカで遊泳した参加者の「アンケートや質問回答書」を分析して、和歌山県太地町(森浦湾)の施設での結果と比較したデータからイルカと自閉症児の体験から何が見え、何がわかるのか、アンケートを通して報告する。今回は、2002年と2003年のキャンプに主眼を当て、前後の行動がどのように変化したかを報告する。
海洋環境を利用したイルカ体験を報告するが、研究者と保護者が積極的に海と関わりイルカと水中で接触し、子どもがどのように反応するかということを調査した。
さらに、黒潮が流れる温暖な海洋環境が彼らの意識に対しておよぼしうる影響についても調べることにより、広義イルカセラピーの在り方についての考察の一助とすることを目的とした。
本研究では、ドルフィンキャンプに参加された母親へのアンケート調査を実施することにより、自閉症児に対する海洋体験活動の一つとしてのドルフィンスイミングに焦点をあて、自閉症児の「心の開放」としての乗イルカ体験活動のあり方を探り、その有効性を検討。

方法・結果・考察
 これまで、施設内だけのイルカ体験での調査研究が多いが、海環境下、における「イルカ体験」という仕掛けづくりは少ない。今回の報告には5歳から10歳の年齢の自閉症児が参加。彼らの母親たちのアンケートから得られたアセスメントは、保護者たちは、頭で考えたこと、映像で浮かべたことを先にインプットしているのか、事実や知識のことを質問形式で書く場合が多い。しかし、保護者自身もイルカと並んで泳いだことは、文字でも書き表せない生理的なものである能動的認識。その思いと同じようなことを、子どもたちは五感をとおして、その感性に訴えているという評価が判明。
彼らに、イルカに教えてもらうより、海という環境に関わることの有効性がみられる。性別も年齢も、職業や学歴も関係なく、イルカと泳いだ人には、これまでの生活の質の変化が生じて自然と自分との関係がさらに開かれたことに気づく。以上
以下にその結果を添付します。
 本研究データからわかるのは、遊泳プログラムにおいて、またイルカが野生であろうと、飼育されていようと、お母さんの方がイルカを、より豊かで母性的な対話を心の中で交流させることができるのではないか。お父さんのアンケートと比べても、男性はそんなに官能的表現で反応を示していない。ともすれば、若いお母さんたちも、子ども同様、イルカと泳ぐことがテレビやゲームで遊ぶよりすばらしい経験なのだということを学習する機会が少なかったのか、都会育ちなのか、これまで自然や野生動物に対する理解を深めたことがほとんどなかったことが伺える。イルカと交流できた時の感情はお母さんとお父さんでは異なるという結果がでた。
 日常、保護者たち大人は子どものお世話に追われ周囲に気を使うことが多いとすれば、自然やイルカを対象に遊ぶ時も、その身にしみ込んだ子どもを囲んで包み込むみ、他者との遮断から、開放されにくいようだ。
遊泳プログラムにおいては、できるだけ保護者から、子どもを放して、水中開放を試みる。次に、保護者を先に、イルカに乗せて泳がせるというプログラムを実施。大人の子どもへの関わりすぎという状態(ある種のストレス)を除く効果があった。保護者に気持のゆとりを取り戻すことが、子どもを親自身の手から解放してから、海洋環境とイルカの体験を子ども本位のものにして、心の開放へのアプローチを行ない、その結果と効果を調査した。
 次に、イルカがなぜ人間と交流しようとするのだろうか。次の言葉に要約してみました。
好奇心から交流する。
イルカの遊びの対象である。
イルカから近づく。

本研究への感想
 私の自閉症児に対するドルフィンキャンプの始まりは、御蔵島のドンと呼んでいるお母さんイルカとの出会いからでした。ドンは私が毎回潜ると若いイルカを引き連れて合ってくれました。一昨年の夏、私はリュウゾウ君という5歳の自閉症児と御蔵島の海に一緒に入った。黄色いジャケットを着た彼は浮いた。もちろん私は、彼をささえるために立ち泳ぎでイルカが寄ってくるのを待った。船長の誘導に目を離さず、周囲に気をくばりながら真剣そのものでした。このように、自然の海は不安がつきもの、自閉症児との活動においては一対一の相互作用が大切だということを実感しました。前述しました太地での施設内での活動は、グループでお母さんに守られて対象群のなかで、安心してイルカに会うという前提条件が先にあります。まさに、日常の生活の延長線上でのセッションで、イルカにおいても同じであると思います。これまで、東西において、イルカセラピーの効果を科学的に実証しようとする試みは成功していないと言うべきでしょう。
しかし、私個人のとしては、御蔵島の厳しい海の自然から得られた情報や新しい発見でイルカセラピーのやり方を、よりよく生きようとする人間の感性・感覚(ご先祖から預かった性)から改良することができたと自信を持っていますし、
野生のイルカの役割に関する理解も、リュウゾウ君をとおして深めることができました。入水時、彼の表情は、かたくなに私の背中と手を握り、顔は緊張のあまり口元がひきつってみえました。しばらく二人で浮かびながら、私たちの周りに広がる真っ青な海、目の前にそびえる緑の山の中で波に揺られて過ごすと、ふっと彼の手が私の体からゆっくりと、離れていくのがわかります。
 しかも、お互いに何も言わず、目で確認しあうという不思議な暗黙の了解です。黒潮への緊張が弛緩に変わり、自然にリラックスしているのです。これの環境はなんだろう。お互いの行動をよく考えようと、いつも自分に言い聞かせながら、彼にやる気と献身、そしてそこにあるあるがままの自然の鮮烈さから・・・だろうかと繰り返すだけでした。
二つの異なる場所での活動の結果からわかったことを整理してみますと、

 

2004 HARs 学術大会
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