3.21/22 ポスター N

ハムスターの夜間行動の解析

岡田 進太郎 薮田 慎司 花園 誠
(
帝京科学大学 アニマルサイエンス学科・山梨県)


【緒言】
  ハムスターは、齧歯目キヌゲネズミ亜科に属する小型の哺乳動物であり、一般的になじみのあるゴールデンハムスターやジャンガリアン・ハムスターを含め、5属24種がユーラシア大陸に生息している。 その飼育の歴史は、1930年、シリアで捕獲された9匹の個体を飼育環境下で繁殖させたのが始まりとされる。その愛嬌のある様態から、現在では愛玩動物として根強い人気を維持し続けているのは周知の通りである。しかし、ハムスターは本来夜行性の動物であり、夜間の行動を良く知らないことに起因する脱走などのトラブルが多い。本研究は、夜行性のハムスターに最適の飼育方法を考案することを念頭に、ハムスターの夜間行動の詳細な解析を試みた。

【材料と方法】
動物
実験には市中のペットショップより購入の2ヵ月齢のジャンガリアン・ハムスター雄8匹、雌8匹を使用した。飼育実験室の照明条件は、21時消灯・翌朝9時点灯の12時間明・12時間暗とし、室温は25度に設定した。
実験のデザイン 実験1: ハムスターを雌雄4匹づつのAとBの2群に分け、A群は、450mm×900mm×450mmの水槽で、B群は、246mm×427mm×286mmの水槽で単独飼育した。水槽内には、A・B両群ともに、実験動物用のチップを厚さ1cm程度に敷き詰め、給水瓶、餌入れ、トイレ(砂入り)、パイプ、回し車等の飼育用具を各1個づつ配置した。
実験2: A・B両群ともに床に土を厚さ5cm程度に敷き詰め、その表面積の半分を枯草で薄く覆い、その上に実験1と同様に飼育用具を配置した。

行動記録方法 : 赤外線暗視カメラとビデオを設置し、真上から夜間行動を録画した。録画のスケジュールは、20時より翌朝10時まで、2時間毎に20分間づつの計8回である。翌日、録画画像より行動のレパートリーと、ケージ内のハムスターのロケーションを20秒毎に瞬間サンプリングした。回し車は、その回転数を赤外線センサースイッチとデーターロガーで簡便に記録できる装置を開発、時間帯ごとに回転数を集計した。

【結果】 
 夜間のハムスターは昼間の様態からは想像できないほど、活発に動きまわっていた。しかし、録画画像より完全な読み取りが可能だった行動のレパートリーは、「回し車を回す」・「移動する」・「休止」・「穴を掘る(実験2)」の4種に留まった。「摂食」・「摂水」・「毛づくろい」は真上からの録画画像からは明瞭な読み取りが不能だった。また、実験1、2のA・B両群ともにハムスターは夜間の時間帯のほとんどを「回し車を回す」ことに費やしていた。1例のみの概算だが、実験1の条件では、その回転数は12,449回、走行距離に換算するとおよそ5.4kmに相当した。ただし、実験2の条件では、「穴を掘る」行動が「回し車を回す」行動の合間に散見された。

【考察】 
  ハムスターは夜行性であり、夜間の脱走事件が絶えないことから、夜間行動が活発であることはある程度予想していた。しかし、本研究で観察されたハムスターの夜間の行動量は予想を凌駕していた。ハムスターをよりよく飼育する鍵は、この運動要求をどのように解消してやるかにあると考える。故に「回し車」はハムスターの運動要求を解消するために最適な飼育用具であるのかもしれない。現在、本研究で開発した行動量測定システムを応用、ハムスターの夜間行動について追究している。

 

2004 HARs 学術大会
演題一覧
前演者の抄録  •  次演者の抄録