3.21/22 ポスター M |
児童によるハムスター飼育ケージの工夫 渡辺 祥平 田中 美佑季 薮田 慎司 花園 誠 【緒言】 環境エンリッチメントとは、動物福祉を飼育動物に施すための創意工夫の総称である。ハムスターは愛玩動物として定着しているが、我々はその動物福祉に配慮した飼育の工夫については、なお検討の余地があると考えている。帝京科学大学アニマルサイエンス学科では、学生の創造性を養うために「ハムスターの環境エンリッチメント」を実習のテーマとして取り入れている。最近、この実習の創造性を養うための効果は、大学生のみならず、小学生に対しても有効ではないかと考え、対象年齢を下げた場合に効果的な方法について検討を始めた。今回は、「2003年 青少年のための科学の祭典・山梨大会」に来場した児童に対しての試行について紹介する。また、児童ならびに同伴の保護者に対して行った動物に関する意識調査のアンケート結果についてもあわせて報告する。 【材料と方法】 祭典は県立科学館で11月22日に開催された。本学のブースは多目的ホールの一角に設置された。本学からの参加人数は職員1名、学生14名。持参したものは、ジャンガリアンハムスター11匹、ハムスターの飼育環境を整えるための材料(木屑・黒土・乾草・プラスチックパイプ・木製ブロック・回し車・家・トイレなど)、市販のハムスターフード、ポリカーボネートの飼育ケージである。本ブースの利用を希望した児童には、まず野生のハムスターの生態や習性について簡単にレクチャーをした。その後、飼育ケージを与え、学生ボランティアの介助の下で、前述の色々な材料を好きなように利用させた。そして、その作品制作課程をデジタルビデオカメラで記録した。 最後に児童とその保護者に対して簡単なアンケート調査を行った。なお、この試みの開始時刻は、午前9時、終了時刻は午後4時であった。 【結果】 当日は連休の初日ということもあってか、例年にない盛況ぶりで、科学館への来場者は開設以来最高の約2660名であった。本年は利用者の殺到を予想し、対応の学生数を前年の倍としたが、それでも対応しきれないほどの児童・保護者が絶えることなく本学のブースにも訪れた。そのうち、実際にケージの工夫に取り組み、アンケートに答えてくれた利用者数は134名であった。 児童の手による工夫は、立体的に構築するもの、平面的に構築するものなど様々であり、また、選択する材料にもバリエーションがあり、児童の個性(動物観。この場合はハムスター観。) が窺えた。ビデオ解析の結果、動物飼育経験に関わらず「回し車」を選ぶ傾向が強いこと、動物の棲みかとなる材料を選んだ児童にはハムスターもしくは他種動物の飼育経験のあることなどが明らかとなった。また、ハムスターを入れた後は材料に触れようとせず、行動を観察しようとする傾向が強いことが明らかとなった。 【考察】 今回のこの試みは、学生実習の内容を、児童に対してどのように改変すればより有効かを検討するのが目的であったが、それよりも自身の工夫を通じ、ハムスターに対する関心が増している児童の様子が印象的であった。本研究の手法は、児童の動物観を推し量ることに有効のみならず、「動物介在箱庭療法(Animal Assisted Sand Play Technique ; AASPT)」とでも名づけ得るものに昇華可能ではないかと考えている。現在、この着想のもとに、さらに研究を進めている。
|
2004 HARs 学術大会 |