3.21/22 ポスター G

教員志望学生の動物飼育体験における
動物に対する意識と問題点

竹内 一男1) 鳩貝 太郎2)
(1)玉川大学教育学部・東京都 2)国立教育政策研究所・東京都
)


 小学校での動物飼育が他と大きく異なる点は、児童に動物飼育をさせるところである。教員はどうすれば、子どもが喜んで動物の世話をし、動物が快適な生活を送るか、それらを通して子どもたちに何(知識・心情・行動・社会性)をどのように学習させるかを常に考えている。このことがうまくいかないところに問題がある。その一つの大きな要因は教員が飼育動物に対する知識、世話の仕方や扱い方を知らなかったり、問題解決能力がなかったりすることにある。そこで教員を志望する学生に動物飼育の経験をさせると共に、動物に対する意識や世話に対する姿勢及び問題点をハムスター飼育の体験から探った。

1.飼育当番
 16〜21人の学生を1グループ4〜5人にして、1匹のハムスターを持ち回りで世話させながら、教室で多数のハムスターを輪番で1年間世話をすることを3回繰り返した。
 1匹飼育では最初は1日ごとに持ち回りをしていたが、10日目前後から学生の都合(学習活動・クラブ活動・アルバイト等)により、3,4日連続飼育するようになり、なかには1週間連続で飼育担当する学生も現れた。それでもグループ全員を回っていた。20日前後からは動物があまり好きでないことや、興味の無い学生が抜けるようになった。しかし動物も飼育もあまり好きでないが責任だけは果たそうと努力する学生もいる。そのような学生には飼育当番がストレスになっている可能性がある。6週間目頃からはグループ内の限られたメンバーだけを回るようになった。3年目の試みでは最初から1週間交代にしたグループはその方法で長続きした。
 学生と動物の関係をハムスターの飼育で見ると、嫌いから好きまでにはいろいろな段階があることが分かる。

以下のように分けた。
@動物が嫌いで飼うことも苦手。             A動物は嫌いでないが、飼うことがいや。
B動物は嫌いでないが、自分から進んで飼いたくない。   C飼育をしてみたいが自信がない。
D飼育に興味があり面白いと思うが、連日飼育することに抵抗感がある。
E飼育が連日続いてもよいが何か不安がある。       F飼育を続けてもよいが、一時休みたくなる。
G動物が好きで飼育も楽しい、しかしマンネリ化する。
H飼育が楽しく、科学的な観察態度で動物に接することができる。

2.動物観察
  飼育日誌を見ると毎日飼育者が変わっている時は丁寧な記述で、前の飼育者と自分の観察を比較し、新しい試みが見られる。連日飼育になると書かれることが短くマンネリ化していることがわかる反面、前日との比較などからその個体の変化の様子が解る場合もある。しかし無意識的飼育になる傾向が強く、観察眼が次第に薄れてくる傾向がある。全体的に見て愛着心は育つが、自然科学的に観て判断し、試みることが学生に不足している。子どもが喜んで動物の世話をするように仕向けるには、子どもが観察したり、調べたりする課題を常に見つける観察眼やそのポイントを学んでおく必要がある。
 単独飼育では観察力が集中するが他個体との比較ができない。単独飼育をする一方で、多頭飼育を経験させ、小さい生き物にも性格があり、生き物には常に個体間差があることを認識させておく必要がある。
 動物飼育は楽しいこと(餌やり、触れる等)と嫌なこと(糞尿の掃除等)が常に表裏一体である。多頭飼育に慣れておく事が将来動物を飼育する時の大きな自信になると共に、飼育現場に遭遇した時に慌てない。

 

2004 HARs 学術大会
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