3.21/22 ポスター F |
大学生の動物への意識に対する一考察 石川 秀香 竹内 一男 動物を題材にして造形制作を行った場合、対象動物になるべく近づけて写実的な作品に仕上げれば、その動物らしさを表現できるかというと、必ずしもそうでない場合がある。たとえば翼を実物以上に大きくすることで、その鳥の逞しさを表現し、結果としてはむしろその鳥らしく見えることもある。動物を対象とする場合はその特徴をどれだけ注意深く観察していたかが問われるのである。 学生の授業における制作物を見ると、対象とした動物の特徴を曖昧に捉えているためにその動物らしさを損なっている場合が多い。学生の作品から動物に対する意識程度を調査した。 調査対象学生 教職関連科目 図工科指導法 前期 1クラス 53名 後期 2クラス 57名 使用時間:100分授業 3回 調査対象授業 様々な紙を立体的に使ったお面づくり(小学校中・高学年向き授業のために) 作品作成材料 ボール紙、 画用紙 色画用紙 ケント紙 色紙 その他補助素材 前期授業 作品制作状況 ・動物(ウサギ5名 ブタ5名 ウシ、ゾウ、ライオン各2名 オオカミ、ネコ、キツネ、イボイノシシ、イヌ、ニワトリ、タコ、クラゲ、獅子、各1名 ) 計25名 ・ヒト(母親、黒人、男児、顔(顔、歌う・舞踏仮面2名・ピエロ)計8名 ・想像上の人物(山姥、ひょっとこ、鬼、河童、ダイヤマン、バイキン星人)計6名 ・植物(葉、桃果実、イチゴ果実、花、マツ球果、木の神様、花の精)計7名 ・ロボット、電車各1名 ・バケツ、鉛筆各1名 ・太陽、星、雲 各1名 後期授業 作品制作状況 ・ 動物(ネコ4名 イヌ、クマ、ウサギ、トリ各3名 キツネ、ライオン、カエル2名 ウマ、サル、 ゾウ、トナカイ、ネズミ、パンダ、タコ、ピカチュウ)計30名 ・ヒト(自分、物語登場人物、ピエロ等)14名 ・想像上の人物(鬼、般若、仮面ライダー等)6名 ・植物(イチゴ2名、パイナップル、杉の木)4名 ・ロボット、自動車など3名 動物のお面を制作した学生の比率は前期約47%、後期約53%であった。子どもを対象とした場合に動物が好適材料であることを学生も知っている。人と動物の何らかの交わりが小さい時から始まっている証拠でもある。 ウサギ5作品についてみると、顔の色はピンク2、白2、レモン色1であった。耳の中央部がピンク2、シロ2、空色1であった。口のないのは1つ、鼻のないのは1つ、髭のあるのは1つであった。実際のウサギの髭は50本以上はある。ハムスターやウサギを飼育させると髭を描くようになる。 ブタ5作品についてみると、顔の色はピンク4、ベージュ1であった。鼻はクロが4つ、濃茶1であった。口は赤、濃茶各1であった。耳は内側がピンク3、ベージュ1であった。学生が抱いているブタの色のイメージはベージュっぽいピンクが多いが、実際のブタの色はもっと複雑である。また鼻の形なども複雑であり、食べる面では身近ではあるが、観る面からはブタは身近な動物ではなくなっていることが伺える。 作品がイヌなのかクマなのか、またはネコなのかイヌなのかなど、個々の動物の特徴が明確に表現されていないのは学生の観察不足や動物との触れ合い不足からくる、意識の低下にあると考えられる。しかし反対に個々の部位に対する特徴の把握には乏しいが全体的な雰囲気を捉えた作品もある。それらからは対象とした動物をしっかりと意識し、頭の中で回想している様子が伺える。
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2004 HARs 学術大会 |