小学校のウサギを用いた主張授業プログラム
松本 朱実
(動物教材研究所pocket・和歌山県)
井上 以津子
(元アニマルエスコートサービス)
はじめに
大阪府では2002年度より教育委員会や府内市町村と連携をとった環境学習人材支援事業を発足させ、環境分野の専門家を府下の小学校に派遣して体験的な環境学習の展開を図る支援を行っている。この事業の一プログラムとして、小学校4年生と6年生を対象に、「飼育動物を通して生命や環境を考えよう」というテーマで出張授業を実施したので、その内容を報告する。
プログラムの目的と「ウサギ」の教材的価値
このプログラムでは、「動物との関わり」を通して生命の尊さや環境に対する関心を高めてもらうことを目的とした。環境学習では、環境問題を自分の問題としてとらえ、主体的に問題解決に関与する態度を育むことが重要である。したがって、「動物との関わり」を扱う場合にも、子どもが身近に接する機会のある動物を導入に用いれば、関心を喚起する上で有効だと考えられる。そこで、@どの児童も接する機会を持てる、Aどこの学校でも同様の学習活動を展開できる、B哺乳類なので親しみや自分との共通性を実感できる、という利点から、学校で飼育されている「ウサギ」を導入の教材として用いることにした。
「ウサギ」を用いた授業内容
授業前に、児童に対してウサギと接するに当たっての意欲や今までの体験を質問紙調査した結果、各児童により関心や体験は様々であり、その内容によっては学校での飼育活動に関する課題が示唆された。したがって、出張授業ではウサギの習性や動物学的知識、ならびに正しい接し方や飼育管理のあり方を、体験的に学んでもらうプログラムを計画した。その内容はつぎの通りである。
1. 班対抗ウサギクイズ
班で話し合いながらクイズを行うことにより、友だちと楽しみながらウサギについて見つめ直す。
設問は、「カイウサギはどのウサギを家畜化したか?」「ウサギの苦手なことは何か?」など、ウサギの習性や、ウサギの立場に立った関わり合いのあり方を考えてもらうものにした。
2.ウサギのしぐさ観察
飼育者の責任として、ウサギを普段からよく観察すること、そして各個体の様子をチェックすることの重要性を認識してもらうために、しぐさを観察する活動を入れた。自分の好きな個体を1頭決めてずっと追いかける活動は、そのウサギに対する共感や気づきを促していた。
3.ウサギに触れる体験
児童には円になってしゃがんでもらい、中央に入った支援者が順番にウサギを触らせるようにした。その際に、ウサギの足先や生殖器などを観察させたり、ウサギが落ち着く抱き方を指導したりした。
今後の発展と課題
授業後、児童のウサギに対する関心や認識の広がりが見られ、この体験を契機として、「人間による動物の利用用途」「ペットに関する問題」「移入種問題」などの話題を2回目の授業に導入し、環境学習プログラムに発展させた。しかしながら、児童の認識は深まっても学校での飼育環境が改善されないという問題もあり、今後は教師と共に、学校でウサギを飼育する意義や正しい飼育環境のあり方を考え直す機会を設け、児童にとって生命や環境を学ぶための有効なウサギとの関わり合いを実現する支援を行いたいと考える。
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