ヒトと動物の関係学会(HARs)

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学術発表審査会報告

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第一回学生院生学術発表審査会結果と総評
2005年1月15日、ヒトと動物の関係学会初の学生院生学術発表審査会が行われた。会場は日本獣医畜産大学医療センター、審査員は学術委員および編集委員の7人。発表演題は38題で、そのうちの11題が3月の大会での発表権を獲得した。また、奨励賞として1題が選ばれた。奨励賞は大会時の総会において授与式が行われる。
 

奨励賞
「動物介在箱庭」から読み取れる児童の動物観について
 田中美佑季/帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科

大会発表権獲得(発表順)

@「動物介在箱庭」から読み取れる児童の動物観について
   田中美佑季/帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
A「動物」から見える釜ヶ崎
児玉夏子/京都大学大学院人間・環境学研究科
B日本絵画史における動物の擬人化表現 
藤岡摩里子/早稲田大学大学院
C乗馬療法が肢体不自由児に与える影響に関する研究 
江波戸弘和/群馬大学教育学部 障害児教育専攻
D多摩動物公園昆虫館における教育プログラム開発の試み
堀内貴充/帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
Eツシマヤマネコの保護活動に関わる人の生活 
大庭隆嗣/日本獣医畜産大学応用生命科学部動物科学科食料自然管理経済学教室
F動物/ロボット介在活動における高齢者の反応の違い 
小笠原梨絵/帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
G地域の河川を利用したいのちを実感させる環境教育の試みについて
村木佑実/帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
H職場でのコンパニオンアニマル(犬)の介在効果について
矢島伴美/帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
I公共交通機関における身体障害者補助犬同伴者の受け入れについて         
本間佐紀/日本大学生物資源科学部動物資源科学科
Jイヌにおける末梢血単核細胞中の抗β−エンドルフィン抗体陽性細胞と散歩による影響 
舛方祐子/帯広畜産大学家畜生理学教室

◆総評◆  学術委員審査委員長・防衛医科大学/横山章光

「学生院生学術発表審査会」を今年から開催することにしたのにはいくつかの理由がある。
@「ヒトと動物の関係学会」が開設してから丸10年を迎え、「世の中への認知」の次のステップが求められていること。
A3月の総会に、あまりにも多くの発表が集まり、しっかりとした討議をする時間がないため。
B学生達に切磋琢磨をしてもらうため(「審査」される)。
C同じ研究をしている学生達の関係作りをするため。
D学生達が大舞台で発表し易い環境を作るため(総会は少し荷が重い)。
E地方の学生たちにチャンスを与えるため(音声だけなどの参加も可)。
F2年後に控えたIAHAIO東京大会への下地作り。
G大賞を作り、励みとするため。

これらの考えの元「意図通り本当に集まるだろうか」とおずおずと始めたのであるが、ふたを開けてみると38件の応募があり、全く懸念の必要のない大盛況振りであった。 カテゴリーも多彩で大まかに分類すると「動物介在教育」「犬と飼い主の関係」「動物と学生の意識」「動物と社会・文化」「アニマル・セラピー」「障害者乗馬」「動物園」「動物行動学」などであり、特に今回は「動物介在教育」「犬と飼い主」における発表数が多かった。1人15分の持ち時間のため休憩時間も入れて10時間半の予定であったが、夜8時近くまで会場には人が多く残って発表に耳を傾け続けた。この熱心さは、自分が発表することもともかく、様々な知識を得たいことや、どのぐらいのレベルで研究が行なわれているかなどへの興味からきているものと思われる。 さて、その38件の研究発表から10件程度の発表が、3月の総会での発表の「権利」を勝ち得、また最優秀賞が選ばれるのであるが、審査するのはことのほか大変であった。今回の審査員は学術委員と編集委員合わせて7人であったが、10時間聞き続けるということは思っていたより大変なことではなかった。それは全発表がどれもなかなか面白かったためである。むしろそれらから優秀発表を10題あまりを選ぶのはすんなりとはいかないであろうことは予想できた。 我々審査員は公平を期するため、発表を聞きながら審査員それぞれが5点満点で点をつけ、審査会終了後に平均点を取って順位をつけた。また、自分がかかわっている研究への審査はしないこととした。 結果として最優秀賞に帝京科学大学の田中美佑季さん、その他、総会の発表者として10人が選出された。そのラインナップを見てみると、上記のカテゴリーがほどほどのバランスで選ばれていることが分かる。

田中さんの「動物介在箱庭から読み取れる児童の動物観について」は、大学での活動報告とともに、ハムスターを飼っている児童の方がむしろ擬人的にハムスターを見なし、飼っていない児童の方がむしろ自然的に見なすという面白い結果を導き出しており、他の「AAE(動物介在教育)」関係の発表の中では一歩抜きん出ていた。ちなみにこの結果は3年前のリオ・デ・ジャネイロでコスタリカの研究者が発表した「動物の知識がある者のほうが野生動物を自分ちで飼っている割合が高い」と共通する部分があって非常に面白い。総会での考察、議論が楽しみである。
児玉さんの「動物から見える釜が崎」は、本人が不在でかつなぜかパワーポイントから音声が出ないという中で選ばれた異例の発表であったが、その考察の巧みさと、写真のインパクトから、総会でぜひ聞いてみたいという審査員が多かったのであろうと思われた。
江波戸さんの「乗馬療法が肢体不自由児に与える影響に関する研究」は、データ分析に説得力があり、また「教育学部」の学生が果敢にこの分野に取り組んでいることが評価された。
岡さんの「日本絵画史における動物の擬人化表現」は、二足歩行で衣服を着ている動物画がなぜ書かれたかを3つの理由に分けて考察。
小笠原さんの「動物/ロボット介在活動における高齢者の反応の違い」は動物とロボットに対して高齢者の反応が違うことをデータから実証してみせた。
堀内さんの「多摩動物公園昆虫館における教育プログラム開発の試み」は動物をネタにした紙芝居の有無によって子どものお絵かき反応が異なることを示し、村木さんの「地域の河川を利用したいのちを実感させる環境教育の試みについて」は動物との関係をもっと広い視点で捉え大学生が子どもたちを河川で遊ばせる効果を見せてくれた。
矢島さんの「職場でのコンパニオンアニマル(犬)の介在効果について」は職場環境の下で作業をさせた後に犬やロボットと遊ばせて介在効果を数値で導き出し、大場さんの「ツシマヤマネコの保護活動に関わる人の生活」は昔からの農林業があることがむしろツシマヤマネコの生活にとっていいということを説明した。
舛方さんの「イヌにおける末梢血単核細胞中の抗βエンドルフィン抗体陽性細胞と散歩による影響」も本人不在のスライドだけの発表だったが、イヌにおけるストレス指標の説明をさらに総会で聞きたいと思わせる内容で、本間さんの「公共交通機関における身体障害者補助犬同伴者の受け入れについて」は公共交通機関への補助犬の本当の認知はまだまだ浸透していないことを力説した。

ここで、上記11人とそれ以外の点数はまことに僅差であったことを付け加えておかなければならない。どのぐらい僅差だったかと言うと、審査員1人2人が点数を1点加えただけで、顔ぶれの数人が変わってしまうほどの僅差である。 とは言え、審査するほうもさまざまな面に目を光らせていた。例えば内容、分かりやすさはもちろんのこと、オリジナリティ、総会向きか、新たな発見があったか、態度や口調、質問への返答などである。その中でも私が特に重視したのは以下の3点である。
@ 発表内容がこちらの頭の中にすらすら入ってくるか。 発表者の中には自分たちのやった内容を全てスライドにして莫大な量を並べる者もいたが、数秒で一枚のスライドを見せられても、全く頭には残らない。一度作ったものを削るのは大変であるが、それをしなくてはならない。スライドは多ければいいのではなく、その行為はむしろ聞いている者の気持ちを考えていないことになる。
A この研究が先行研究に対してどの位置にあるのか。 様々な研究テーマがあるために、聴衆が全ての先行研究を知っているとは限らない。よって、このテーマ、結果が全体の中でどのぐらいの発見になるのかを必ず示さなくてはならない。そのためにはもともと自分たちも文献などを読んで知っておく必要があるのだが、そこまで説明した発表は少なかった。
B 質疑応答したときの受け答え。 質疑応答というある種の「応用問題」において、いかに気の利いた返答ができるかは、その人の研究の深さにかかわってくる。発表はいまいちだったのだが、質疑応答で盛り返すケースも多々ある。日ごろの思考や、疑問を自らに想定していたかどうかが深く問われる。

この3点をぜひ翌年の参考にしてほしい。  選に漏れた発表は、総会の時にはぜひポスターとして発表して、ポスターセッション等を通じて多くの人に見てもらって欲しい。また通過者も本番に向けてさらに発表内容にブラッシュアップをかけてほしい。そして、学生達が切磋琢磨して本番に望むのであるから、総会の一般発表において現在の研究者達がそのお手本を示すべく、奮って参加して欲しい。 来年も今年以上の発表が並ぶことを期待する。

学生院生学術発表審査会2005 タイムスケジュール
時間
区分
演題
発表者
10:00
〜 11:00
動物介在教育@
「動物介在箱庭」の実践と解析

渡辺 祥平
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科

「動物介在箱庭」から読み取れる児童の動物観について   田中 美佑季
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
ハムスターを用いた小学校訪問活動のプログラム開発とその実践 小檜山 祐介
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
小・中・大動物を用いた小学校訪問ふれあい活動の実践とその有用性 横井 恵  
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
11:00
〜12:00
犬と飼い主@
犬との共生環境エンリッチメントに関する研究−特に「ワンだぁルーム」の有用性について 庄子 絵美 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
犬に関するエピソードから見た人と犬がつくりだす関係   宮村 春菜   
日本聴能言語福祉学院
子犬の問題行動としつけの現状調査  今野 里香 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
犬の散歩における人の意識  松尾 靖子
ヤマザキ動物専門学校
12:00
〜13:45
動物と学生意識
大学生の動物観とそれに対する専門教育の影響について 後藤 章浩  
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
北里大学獣医畜産学部学生有志による『犬部』の活動について  太田 快作
北里大学獣医畜産学部獣医学科5年次
動物と社会・文化
「動物」から見える釜ヶ崎  児玉 夏子
京都大学大学院人間・環境学研究科
新しいペット税の提言―共生関係の実現に向けたペット政策 福岡 今日一 
同志社大学大学院総合政策科学研究科
ヒトと動物の境界線

吉井均枝
筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期過程

公共交通機関における身体障害者補助犬の受け入れについて 本間佐紀
日本大学生物資源科学部動物資源科学科
日本絵画史における動物の擬人化表現 藤岡摩里子
早稲田大学大学院 
13:45 〜14:15
休憩
14:15
〜15:15
AAT 乗馬
動物に対する自然療法の現状と課題   松本 豊 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
老人福祉施設における動物を伴った訪問活動について 伊吹 麻衣
日本大学生物資源科学部動物資源科学科
障害者の乗馬体験後の変化について. 大日向 千里 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
「乗馬療法が肢体不自由児に与える影響に関する研究」 江波戸 弘和 
群馬大学教育学部障害児教育専攻 
15:15
〜16:30
動物園他
「動物園飼育下におけるフェネックギツネの行動について」 三矢本 愛
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
多摩動物公園昆虫館における教育プログラム開発の試み 堀内 貴充
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
スナネズミの夜間行動の解析とそれから導かれる共生環境エンリッチメントについて. 林 真理子
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
ユキヒョウの繁殖行動の解析   坂本 千尋
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
ツシマヤマネコの保護活動に関わる人の生活  大庭 隆嗣 
日本獣医畜産大学応用生命科学部動物科学科 食料自然管理経済学教室
16:30
〜17:15
動物とロボット
RAAとAAAに対する学生ボランティアの意識の違い 小野 雄史
帝京科学大学アニマルサイエンス学科
動物/ロボット介在活動における高齢者の反応の違い  小笠原 梨絵 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
動物(イヌ)に対する意識がペット型ロボットに示す行動の違いについて  長門 将幸 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
17:15 〜17:45
休憩
17:45
〜19:00
動物介在教育A
地域の河川を利用したいのちを実感させる環境教育の試みについて 村木 佑実 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
教育支援交流における動物介在教育プログラム開発の試み 花園 美樹 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
動物介在教育の評価方法に関する検討  田邉 かえで 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
動物介在教育に対する保護者の意識について  溝端 真也 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
子供の成長と動物のイメージ〜お絵かきから〜  宮島 久美 
ヤマザキ動物専門学校
19:00
〜20:30
犬と飼い主A
「高齢犬の行動変化と飼い主の意識」 尾池 香里 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
職場でのコンパニオンアニマル(犬)の介在効果について〜気分プロフィール検査による実験的検証〜. 矢島 伴美 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
パピーパーティの現状調査とマニュアル作成の試み

柳沢 綾
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科

日本とアメリカの多頭飼育崩壊の比較  大沼 陽子
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
イヌの瞳孔サイズの変化に影響を与える要因について  小泉 満 
帝京科学大学理工学部アニマルサイエンス学科
イヌにおける末梢血単核細胞中の抗β-エンドルフィン抗体陽性細胞と散歩による影響 舛方 祐子 
帯広畜産大学獣医学科家畜生理学教室
「学生、大学院生のための学術発表審査会'2005」のお知らせ
  ヒトと動物の関係学会では、来年から「学生、大学院生のための学術発表審査会」を実施いたします。これは学生、大学院生等からの演題発表を審査し、学術大会の事前審査に代えるものです。口頭発表はもちろん、パワーポイントやビデオのみでの参加も受け付けます。審査を通過した演題は学術大会での発表権を得ることができるうえ、優秀な演題には奨励賞が与えられ、大会においても審査会同様の発表形式をとることができます。
これまで、時間的・金銭的な理由で学術大会への参加が難しかった方、大会での学術発表には勇気のなかった方、当学会の新しい試みにぜひご参加ください。お待ちしています。
なお、審査会開催日時は2005年1月15日(土)午前10時〜午後5時です。学生と院生にのみスポットを当てた学術発表会です。発表者以外の方も数多く参加して議論に花を咲かせていただきたいと願っています。
   
開催日時: 2005年1月15日(土)午前10時〜午後5時
開催場所: 日本獣医畜産大学動物医療センター501号
  JR中央線武蔵境駅 徒歩5分
   

募集規定

1. 演題投稿資格
   投稿は学生(大学・大学院・その他教育研究機関)によるものとする。
本人もしくは指導者が本学会の会員であることが必要である。
   
2. 演題の内容
   演題の内容はヒトと動物の関係に関するものとする。ヒトと動物の関係に関する研究、実践的報告など、ヒトと動物の関係の構築に寄与し、会員の相互啓発、議論の深化につながるものが望まれる。
   
3. 演題投稿の方法
   上記内容の演題を12月20日までに学会ホームページ上のフォーマットにそって学術委員会までE-mailで申し込む。
   
4. 演題発表と審査
  (1)演題発表
発表は1題10分、質疑応答は5分とする。

(2)審査委員会による審査
申し込まれた演題は「発表審査会」で発表され、審査委員会によって審議決定し、その結果は速やかに応募者へ連絡するとともに学会ホームページで公表する。

審査委員会は、学術委員会委員長(日本獣医畜産大学・松木洋一)を審査委員長とし、学術大会会長、編集委員会委員、学術委員会委員を審査委員とする。
   
5. 学術大会への発表優先権
   「学生、大学院生向け学術発表審査会」で発表し、それなりのレベルと認められた発表には、学術大会への発表優先権を授与する。
   
6. 奨励賞
   発表演題のうち、とくに優秀と認められた演題に対し、賞状および副賞を授与する。

以上をご理解の上、応募フォームへお進み下さい。
応募フォームへ進む(締め切りとさせていただきました)


投稿の問い合わせ

演題投稿等の問い合わせは、下記宛にする
〒180-8602東京都武蔵野市境南町1-7-1
日本獣医畜産大学・応用生命科学部・動物科学科・食料自然管理経済学教室
ヒトと動物の関係学会学術委員会
電話/ファックス:0422-32-4346
Email アドレス:myoichi@nvau.ac.jp

 
     
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