ヒトと動物の関係学会(HARs)

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月例会報告

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第61回 ヒトと動物の関係学会 月例会
『オランウータンと人との関係−野生と動物園−』
日時: 2008年6月28日(土) 14: 00〜16:00
会場: 東京大学農学部4号館104室

講師:
樺沢麻美(京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域専攻)

  「チンパンジーってどんな動物?」と聞くと日本の人たちはどう答えるだろうか。「かわいい」、「人間と似てる」、「犬と一緒におつかいに行ってくれる」、「おとなしくていっぱい芸をしてくれる」と、こういったイメージが多いだろう。しかし知っているだろうか、チンパンジーも絶滅危惧種だということを。本日の講演ではそんな人々の価値観の違いによって今まであつかわれてきたチンパンジーの現状と、現在どのような保全、保護活動がおこなわれているかについて、これまで、米国、ギニア、シエラレオネなどのサンクチュアリでチンパンジーの飼育、福祉、研究、保全などの活動に従事してきた、現在京都大学大学院生の樺沢麻美先生からお話いただいた。
  チンパンジーは人と似ているというように、人とのDNA塩基の違いは2%以下ととても近い。アフリカの森林地帯に生息し群れで行動する大型類人猿である。おとなしそうに見えるが、怒ったらとてつもなく凶暴で人の手ではとめられないほどで、グループで小さいサルなどを食べることもあるらしい。主には果実を食べ、道具を使うとても器用な動物だ。1640年にヨーロッパに初上陸。現在、アメリカや日本、ヨーロッパで飼育されている個体の多くは「西チンパンジー」という種類である。身近に見られすぎて絶滅危惧種であるとは思われないだろう。そんな多くのチンパンジーの輸出国は西アフリカにある「シエラレオネ」というところである。首都は「フリータウン」で、そこはとても小さな国で、昔は内戦が10年以上も続いていた。ヨーロッパの植民地で貿易も盛んにおこなわれていた。奴隷や木材、農産物のパームやカカオ、そしてダイヤモンドなどの鉱物も採取されていた。あの有名な映画「ブラッド・ダイヤモンド」の舞台もここシエラレオネらしい。そこでは、野生動物も多く生息している。そんな中、チンパンジーは多種の目的で捕獲され、輸出されていた。動物園、サーカス、毛皮、また実験にもチンパンジーが利用されていた。記録が残っている10年間だけで2044個体も輸出されていた。そこで捕獲が与えた野生個体群への影響はすごく悲しい現状だった。捕獲されるのは扱いやすい子どものチンパンジーだった。その子供のチンパンジーを捕獲するためにはまず親を殺さなければならない。しかし群れで行動しているため、親だけではすまない。最低でも1匹を捕獲するために5匹が殺されていたといわれている。ということはあの10年間で2044個体輸出されたために、約10000個体も殺されていたということだ。ワシントン条約も1975年にむすばれたが、密輸や輸出は続き、その後も輸出が規制されても国内での捕獲は続いた。フリータウンでは80年代に、チンパンジーは飼いならせるという軽い考えで60個体がペットとして飼育されていた。しかし、成長したチンパンジーは飼いきれなくなり射殺される。栄養失調で毛が抜けるものもいたり、逃げ出さないように鎖でつながれっぱなしで餌も与えられないものもあった。すべてが悪循環だった。そんな中にできたのが、チンパンジーの聖地である保護施設のチンパンジー・サンクチュアリだった。ペット取引の根絶、野生チンパンジーの保全を進める教育活動も行われている。保全、保護活動も広がり現在は85個体が飼育されている。このような活動の中で、現地の人たちはどう考えているのだろうか。彼らにとってチンパンジーとは何なのか。いろいろな考えを持っていた。食べる人もいれば宗教上の関係などで食べない人もいる。伝統医療でもあり、子どもが強くなる、お産が楽になる、マラリヤや骨折などに有効だといわれ利用していることもあった。また保全の面で言えば、自分たちの生活を脅かさない範囲で保護されるべきだという考えだった。彼らにとってチンパンジー観のまとめで言えば、動物の中で最も近い存在、食肉としての利用は人による、野生のチンパンジーは挑発しなければ安全、「存在する」ということは誰かにとって価値がある、というものだった。われわれ日本人はチンパンジーを食べていると聞くと考えられないと思うが、ここが生活観の違いだろう。しかし、外国人のチンパンジーに対する考えは、大事な医療にも役立ってはいるが、ほとんどはお金儲けのためだっただろう。最近では輸入も規制され、国内での繁殖によってふやされている。今回のまとめとしては、先進国でのチンパンジーの扱い方の歴史と現状は生息国の保全と無関係ではない。保全の主役であるべき現地の人々の考え、歴史的背景を踏まえた活動が重要。また、日頃からの現地政府、住民との友好的な関係が、活動に対する協力を生むということだった。そのためにもまず、生息国を知り、生息地を知ってその現状を知ることが大事だということだった。
  私は今まで、何回動物園に行って、チンパンジーを見てきただろうか。何も知らなかった私はただかわいいという気持ちだけで見ていた。今はお使いやテレビに出てくるアイドルのチンパンジーもいる。すごく愛おしく、私もあんな芸ができるサルを飼ってみたいと思ったこともあった。どれだけの命が奪われているのかも知らずに。樺沢さんはペットについてかなりの批判的な感情を持っていた。それはやはりこれまでの現状をひしと身に感じているからだろう。無知であることは本当に怖く悲しいことだと痛感した。また、人々のものの価値観の違いも感じることができた。「シエラレオネの人たちは日本人と似ているところがある。」と講演中に樺沢さんはおっしゃった。私はその言葉に何かとても深いものを感じた。国境を越えた人間観の違い。お互いを知ることが野生動物との共生を考える上で最も大事なことだろう。私たちは何であれ成功してきた。医療も発達した。しかし、現地の人々は?チンパンジーの命は?減る一方だ。今自分はどうすることもできないがまた新たに知ることができた。しかしサルだけではない。ほかの動物も私の知らないところでどのように扱われているのかわからない。私は毎日と言っていいほどポテトチップスなどのお菓子を食べている。その中に含まれているパーム油。そのパーム油は森を伐採し植林されてできている。私はそのお菓子を食べていた。そのことで、あのジャングルで幸せそうに暮らしているチンパンジーたちを傷つけていることと同じだと思うと心が痛む。今日の講演では無知の怖さを改めて感じさせられた。私も今できることは何かを考えながら生活していきたい。知るだけで終わらせないように。

 「知ってる?私たちチンパンジーがここにきてみんなに見られるまで、どれだけ多くの命が奪われているか……」 そんなチンパンジーの悲しい声が心の中で響いている。
(帝京科学大学アニマルサイエンス学科1年 蒲生壮扶)



 
     
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