ヒトと動物の関係学会(HARs)

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月例会報告

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第51回 ヒトと動物の関係学会 月例会
『精神科臨床から見た子どもの虐待と動物虐待-虐待からのサバイバルとは?』
日時: 2006年10月7日(土) 14:00〜16:00
会場: 東京大学農学部7号館A棟104号教室(地下鉄南北線「東大前駅」徒歩1分)
プログラム:
講演 佐野 信也 (防衛医科大学校)
佐野 信也 氏 会場の様子 会場の様子
 
       

 約35名の聴講者が集まった、第51回ヒトと動物の関係学会の月例会は、精神科医として総合病院、単科診療所等による臨床実務を現在も行っておられる佐野先生を迎え、精神保健の重要なテーマの一つとして扱われる児童虐待と動物虐待をテーが扱われた。
佐野氏は
・ 「子どもの虐待」とはどういくものか
・ 誰が子どもを虐待するのか
・子どもの虐待のリサイクリング
・子どもの虐待と動物虐待の関連性
・ネットワークの必要性
・リサイクルの輪を切る
といった題を掲げ、 データ、書籍の提示のもと丁寧な議論に進めていかれた。冒頭、DV・児童虐待は従来セットとして考えられてきたが、新たに動物虐待という3側面を考える必要性を述べられた。

子どもの虐待は親または養育者、同胞など家族メンバーによる理不尽なあつかいであり、圧倒的な力(権力、筋力)のもとで行われ、通例身体的・性的・心理的暴力、必要なケアを提供しないニグレクトの4区分に分類される。
ここで言う「理不尽」さという意味は、がんらい保護を受けるべき人からの暴力・被害であり、子どもは幼いほどそのように扱われる理由を理解できず、性格形成、対人関係特性に長期的影響を及ぼす。また虐待の4区分はすべてオーバーラップするなかで、ニグレクトが増加しつつある傾向を佐野氏は示された。経済的問題は児童虐待の大きなリスクファクターであり、我々も含め社会全体のニグレクトも子どもの虐待に関わる。さらに精神科臨床に訪れるのは、自ら悩み、また種々の神経症のなかで子どもへの不適切な対応が浮上してきた母親のケースが多く、また問題となるのは「うつ病」のような脳に関わる場合より、強迫障害など神経症圏病態と孤立状況、被虐待体験の有無、葛藤的夫婦関係などの環境要因であると佐野氏は分析している。

児童虐待・DV・動物虐待においては、フランク・アシオーン氏が掲げた理論をまとめられ、以下の2点を挙げられた。
・児童虐待、DV、動物虐待のいずれか一つが発見されたらあとの二つの減少がないか疑え
・子どもの動物虐待は、自ら虐待されていることや、家族の中に暴力が潜んでいることの予兆である
(Ascione, FR, 2005):邦訳書「動物虐待の心理学−子どもが動物をいじめるとき」
また、上記の邦訳書にも述べられている子ども時代の動物虐待と成人期暴力(フェルナンド・タピアの研究(1971))を例にあげ、子ども反応性愛着障害(DSM-W)から愛着の理論、将来の暴力への発展性も説明された。

児童虐待に対応すべくネットワークシステムの内容も詳しく説明され、熱意やねばり強さをもつコーディネーターの重要性とともに、「システムに任せてはいけない」ということを強調され、 昨年の11回シンポジウムにおいて井野瀬久美恵(甲南大学文学部・教授)氏によってもご紹介された、まさに動物虐待の象徴であるウィリアム・ホガースの絵画「残酷さの四段階」、さらにメアリ・エレン・ウィルソンのケース(1874)の紹介で締めくくられた。これは動物愛護運動が継母からの残酷な虐待を受けた被虐待児を救ったとい、動物虐待、児童虐待ムーブメントの始まりとなる事件である。

質疑においても、自身で扱われた症例の紹介と共に、実質的な現状までお話し頂き、精神医学的観点による実に実りのある講演になった。また、講演は児童虐待に関する基礎、実情、問題点、展望と幅広く、引き込まれるように聴講してしまった参加者の方々も多かったのではないだろうか。この場で書ききるには得られるものが膨大であり、以下に佐野氏がご紹介された書籍を挙げさせていただくが、児童虐待・精神医学的分野にご興味をもたれる方は是非とも一読いただきたい。動物に関わる問題は実に幅広い。人と動物の関係学において学ぶべき点の多さは膨大であると実感させていただいた。

参考書籍
・『虐待された子ども』―ザ・バタード・チャイルド―
メアリー・エドナ・ヘルファ、ルース S・ケンプ、リチャード D・クルーグマン編 社会福祉法人 子どもの虐待防止センター監修 坂井聖二監訳
・子ども虐待の臨床 医学的診断と対応
坂井聖二/編著 奥山真紀子/編著 井上登生/編著
・ 斎藤学(精神神経誌, 1988)
・ 私は親のようにならない―嗜癖問題とその子どもたちへの影響
クラウディア ブラック (著), Claudia Black (原著), 斎藤 学 (翻訳)
・子どもが動物をいじめるとき―動物虐待の心理学
フランク・R. アシオーン (著), Frank R. Ascione (原著), 横山 章光 (翻訳)
・動物感覚―アニマル・マインドを読み解く
テンプル グランディン (著), キャサリン ジョンソン (著), Temple Grandin (原著), Catherine Johnson (原著), 中尾 ゆかり (翻訳)


 
     
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