ヒトと動物の関係学会(HARs)

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月例会報告

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第48回 ヒトと動物の関係学会 月例会
『動物愛護教育(ヒューメイン・エデュケーション)教育と愛護の融合』
日時: 2006年5月21日(日) 13:00〜16:30
会場: 東京大学農学部弥生講堂(地下鉄南北線「東大前駅」徒歩1分)
プログラム:
講演 フランク・R・アシオーン(ユタ州立大学心理学部教授・帝京科学大学客員教授)
パネリスト・コーディネーター・通訳 山崎 恵子(ペット研究会互)
パネリスト 山口 千津子(日本動物福祉協会)
 
フランク・R・アシオーン 山崎 恵子 山口 千津子 総合討論

 2006年5月21、全国的に晴天に見舞われ、久しぶりの光に包まれた東京の午後、ヒトと動物の関係学会第48回月例会が東京大学弥生講堂にて開催された。多忙なる日本でのスケジュールのなか、ユタ州立大学教授・帝京科学大学客員教授 フランク・R・アシオーン先生を招き、また山崎恵子氏、山口千津子氏を迎え、動物愛護教育(ヒューメインエデュケーション)をテーマに多くの参加者が集まった。動物愛護教育、動物介在教育は日本でもその重要性がうたわれ、マスメディアなどによって周知のものとなってきた。子供の動物虐待が対人事件にも及ぶ背景。また一方で学校飼育動物のように、動物を教育に適用し動物との関係の中から人への思いやりを学ぶなど、動物愛護によって得られる効果、その本当の意味、目的は何なのであろうか・・・。

4年前にも本会場にてご講演されているアシオーン氏は児童心理学の観点から話を進め、その冒頭にてアメリカの動物福祉の活性化はイギリスを基にして1880年頃からであることを述べ、出版物「Beautiful Joe」(1893)を紹介された。当時の子供に対する教育は、文学を通した動物愛護教育、またそこから他者に対するやさしさの獲得をめざしていた。アメリカの児童心理の父とも呼ばれるG StanleyはHall's Adlescence(1904 p220)のなかで、"子供にとって自分の魂と動物の魂に隔たりはない"と提唱し、すでに 動物と子供との関係性を児童心理を語る方向を 示唆していた。多くの人々はこの動物というファクターを長い間無視してきたが、これに変化を与えたのが 動物にかかわる子供の発達要因について総合的に取り組んだボリス・レビンソンの2冊の本の出版であると述べられた。
アシオーン氏は、ヒューメイン・エデュケーションとはなにか??といった定義を「共感性、思いやり、責任感、敬意をすべての生き物に対して発達を促す向社会的過程」であると呈したが、社会的背景などの種々の要因を考えればこの定義はある種の流動的なものであるとも付け加えられた。
子供たちは発達過程において自分の行動が他者に影響を与え、また大きく、時には怖い存在である親を必要であるということを理解していく。これらのことは親との共感の中で学び得ていくことである。アメリカの家庭でペットの必要性をもっとも感じるのは子供が小学生にある時期であり、実際何らかの生き物を飼育しているのは全体の75%ほどもある。親になぜ?と問いかけると、動物に対する責任感の獲得、生と死のサイクルを見せる、一人っ子対策としてコンパニオンシップの観点などの答えが返ってくる。親が動物に対する態度や飼い方を直接的に指導することもあるが、それは日常的なコミュニケーションのなかでも起こりうることであると述べられた。これらを考えれると、ヒューメイン・エデュケーションには「公衆衛生の強化の方法」としての有用性もあると定義も示唆できる。
こうした背景をもとに、アシオーン氏はヒューメイン・エデュケーションプログラムを実際に行う全米人道協会およびオーストラリア デルタ協会の実例を出された。これは犬の咬傷事故防止のプログラムであり、明らかにプログラムを受け、正しい知識を身につけた子供たちは犬に対する適切な行動や態度が明らかに高いと報告している。これは、動物とヒトとの関係、動物虐待における第一の予防である。では、第二、第三の予防、すなわちすでに動物に対する虐待をしている、またはその危険性がある子供や動物に対してネガティブな感情をもつ子供に対しての予防はどうであろう。一般教育では無理である。動物を適用したヒューメインエデュケーションプログラムを多くの者が挑んできたが、その効果の測定や評価は報告には盛り込まれない。また失敗例も耳にすることはないといった問題点が挙げられる。アシオーン氏は、これは非常に困難な課題であり、これらは観察、記録、評価、さらにはプログラムに対するプレテストとフォローアップの重要性を訴えた。
さらにアシオーン氏は他者の情緒に対する“共感”と向社会的行動は2才未満から持ち得るものであり、これは多種に対しても言えることであると話を続けた。このように持って生まれた能力をどのように開花させるか、といったプログラムの構成が必要であることを強調し、最後に特に教育者に対してヒューメイン・エデュケーションのあり方を述べられた。この中には、どのような教科の先生でもヒューメインエデュケーションの主題を入れるべきであり、動物福祉団体等と共同作業していくべきである。また動物に関連した子供たちの工作、作文、詩を検討し動物虐待も念頭に入れ教育していくべきであると述べられた。

山崎恵子氏は、自身が思うヒューメインエデュケーションについて述べられた。その定義は難しいが、動物を介在させる目的は大きく二つあり、一つは人道的に考えられる人を作り、共感を得ることであり、また第二に動物介在教育などの上でさらなる目標に到達させるといった点である。実際にこのような活動をしても何のためにやっているのか?というのを考える必要があり、こうしたヒトと動物の根本原理を考えずに愛護教育を行えば動物にとっても対象者にとっても迷惑な話になると強調した。実際にアメリカなどではクリッカートレーニングを人への応用、家族トレーニングに用いていたり、子供の読解力トレーニングにおいて犬に聞いてもらうなどといった事例がある。見切り発車で動物を適応させることの危険性を多く語り、本当の目的を理解した上で教育を行うことで実際に動物がいなくてもこうした教育は可能であることを、自身の教育方法から示された。
また、山口千津子氏は、日本動物福祉協会で協会設立当時から行われている子供の動物に関する作文を事例に出された。動物に対する責任、動物虐待に関して、実際子供たちは様々に考えている。動物の福祉と人間の福祉は同じであり、相手の立場になって考えることは同一であると述べられた。また最後に動物愛護団体などがなくても、人と動物の関係がうまく存在する社会、時代が望まれ、その一つの手段としてヒューメイン・エデュケーションがあるだろうと締めくくられた。

 時間もさし迫り、総合討論に多くの時間を割くことはできなかったが、三者に対して動物福祉に関わる多くの質問が寄せられた。結論的には、どの先生方も動物福祉が確保されていなければ、ヒューメイン・エデュケーションは行うべきではなく、またアシオーン氏は行う人(ヒューメイン・エデュケーター)への教育が重要であることを付け加えられた。
動物愛護教育(ヒューメインエデュケーション)の基礎原理と発展、多くの内容が詰め込まれた本月例会は、大変有意義かつ、充実した内容になった。様々な団体などでこれらの活動がますます増加する中、まさにヒューメインエデュケーターはプログラムの工夫ととに、より多くのことを考えることが望まれる。アシオーン氏の講演はさらに続くので、機会を得て是非足を運んで頂きたい。



 
     
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