ヒトと動物の関係学会(HARs)

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月例会報告

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ヒトと動物の関係学会第39回 月例会
動物観研究会公開ゼミナール

「鳥インフルエンザ事件に現れた動物観」

2004年 5月9日 (日) 13:30〜17:00

場所−東京農工大学農学部・2号館2−103 多目的講義室


13:30〜14:00 「マスメディアの反応−表出した動物関係記事をみる」――横山章光(防衛医科大学校)
14:15〜15:00 「学校飼育動物と鳥インフルエンザ問題」――中川美穂子(日本小動物獣医師会)
15:15〜16:00 「野生動物の『リスク』をどう考えるか」―― 鬼頭秀一(恵泉女学園大学)
16:15〜17:00 総合討論  座長/石田おさむ(東京都多磨動物公園)
   
  パネラーは上3人+池田啓(兵庫県コウノトリの郷公園)

司会の若生氏と開会挨拶の亀山氏 横山章光氏 中川美穂子氏
     
鬼頭秀一氏 池田啓氏 総合討論

 鳥インフルエンザ騒動は、さまざまな問題を残しながらも終結した。今、改めて振り返ってみると、このパニックともいえる騒動は人々の動物観が巻き起こした“事件”だったと言っていい。では、それは一体どんな事件だったのか。その背景にあったのは、どんな動物観だったのか――。


 まず横山氏が、鳥インフルエンザに関する新聞記事を、その発生から終結まで時系列に並べて解説。鳥インフルエンザの危険性について正確なことが伝えられないまま、ただ不安をかきたてられる記事ばかりが報道されたことを指摘。「新聞もテレビも視聴率を優先するあまりに、正しい知識よりセンセーショナルであることを選んだ。それが人々の不安と恐怖を呼び、ペット飼育者や学校は過剰反応した。“捨て鳥”も出た。動物園ですら、ふれあいコーナーを閉鎖するなどの対応をせざるをえなかった。この“事件”はマスコミが起こした。そして行政は適切な指導をせずに放置した」
次に、学校飼育動物のサポートを長年、行ってきた中川氏が、学校や幼稚園で実際に何が起きたのかを報告。「マスコミが作り上げた不安は、“保護者による学校や幼稚園へのプレッシャー”という形で表れた。“何かあった場合の責任”を考えた学校や幼稚園は、飼育動物を手放したり、子どもたちから遠ざけたりした。校長や園長が飼育動物に直接かかわっていないところも、この反応が多かった。だが飼育を教育として考えているところ、校長や園長が動物とかかわっているところからは獣医師への相談があった。そして獣医師は、教師や子どもたちに対する指導や父兄に対する説明をすることができた。適切な処置さえすれば鳥インフルエンザに感染する心配はないのだということを伝えられた。なぜ学者や医師たちは無駄な不安を取り除く発言をしなかったのか。この“事件”は一般の人々の無知が招いたとしか言いようがない」
最後に鬼頭氏が、「人と野生動物とのかかわりには必ずリスクが伴うものだが、時代の変化の中で人々はリスクなしで自然とかかわることができるという幻想を抱き始めた。それが今回の騒動の根源にあり、リスクのあるものを排除しようとする発想をも生んだ。トキやコウノトリなどの野生復帰が一方で叫ばれる今、これは大きな問題である。野生動物によるリスクをどうとらえるかの議論が必要だ。リスクの評価、管理をし、そのリスクをどういう形で受け止めるのかを我々は選択していく必要がある。それが自然保護や環境問題を考えていく視点となるべき」と発言。

 総合討論には、兵庫県コウノトリの郷公園の池田啓氏も加わり、まず京都に近いコウノトリの郷での対応を報告。そして「今回の事件は、人々の動物観の弱さが露呈した結果」。
以後、「リスク回避のために何をすればいいのかが混乱した」、「無知な人々を専門家が正しくおさえようとしなかった」、「なぜ専門家であるはずの動物園までが過剰反応したのか」、「今日はぜひ、マスコミの人間の意見を聞いてみたかった」など結構、過激な意見が飛び交った。
不謹慎かもしれないが、「人々の動物観の弱さ」を実感することになった“鳥インフルエンザ事件”は、実にいい議論の材料を与えてくれたようである。


 
     
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