ヒトと動物の関係学会(HARs)

会員登録内容変更 | トップページへ戻る
HARs活動 | HARs関連機関の活動 |
過去の大会報告 | 事前登録 | 演題募集 |
学会誌一覧 | 学会誌購入 | 投稿 | 投稿規定 |

シンポジウム報告

small logo
   

 

ヒトと動物の関係学会
第12回 シンポジウム
in KYOTO 「上方と江戸の動物観」
日時: 2006年12月3日(日) 13:00〜17:00(懇親会 17:00より)
会場: 大阪ペピイ動物看護専門学校 ホール(JR玉造駅徒歩5分)
13:00 会長挨拶  太田光明(麻布大学)
13:10- シンポジウム「上方と江戸の動物観」 コーディネータ 
秋道智彌(総合地球環境学研究所)
13:20 京・大坂と江戸の間・・・「鳥獣戯画」から「生類憐みの令」まで 奥野卓司(関西学院大学・学会副会長)
  「里見八犬伝」の大江戸鳥飼ブーム 細川博昭(飼鳥史研究家)
  歌舞伎・文楽にみる動物と人間の関係 森田雅也(関西学院大学)
  大坂の「孔雀茶屋」と江戸の「花鳥茶屋」 若生謙二(大阪芸術大学)
14:20 コーディネータによるまとめ  
14:30 パネリスト間討論  
14:50 フロアーからのコメント・質疑・討論  
16:20 IAHA IO東京大会および関西シンポジウムへの呼びかけ 細井戸大成(大阪市獣医師会)
16:35 副会長挨拶 森裕司(東京大学)
     
17:00-19:00 懇親会(会費 \3,000)  
於 大阪市獣医師会セミナーホール
  司会 川久保美智子(関学)
  会長挨拶 太田会長
  開催校挨拶 若生謙二
  関係機関挨拶 大阪市獣医師会
生き物文化誌学会
   
シンポジウムの様子1
シンポジウムの様子2
 開催場所である大阪ペピイ動物看護専門学校は、関西シンポジウムとしては初めての場所。交通の便のよさとテーマのユニークさが功を奏したのだろう、参加者80名と大盛況のうちに終えることができた。開催の労をとってくださった方々に心から深くお礼を申し上げたい。
コーディネーターは前会長である秋道智彌先生の予定だったが、急用のため急遽、前々会長の林良博先生がピンチヒッターとして登場。「今日のテーマは実におもしろそうですね」の挨拶どおり、会場は大きな期待に包まれてシンポジウムが始まった。
パネリストは4人で、まずHARS副会長である司奥野卓司先生(関西大学大学院社会学研究科教授)が「鳥獣戯画から生類憐れみの令まで」と題して講演。「武士の社会であった江戸に対し、武士の影響が薄かった上方では町民のメセナ活動(芸術・文化活動)が盛んだった。また、生類憐れみの令の貫徹も上方の方が弱く、それは、それぞれのペット飼育の違いとしても表れていた。江戸では犬を飼う人が少なかったが(虐待として処罰されることを恐れたため)、上方では薬屋が犬用の薬を売るとともに飼育指南書も出していた。江戸では犬よりも猫を飼い(ネズミ退治として)、家の中に猫がいる絵もある。上方では猫の野性性や自由性を重視していて、その結果、人々が好んだのは猫の王様、虎だった。虎は当時から上方のシンボル的な動物で、今でも阪神タイガースとして生き続けている」などなど、上方と江戸との動物観の違いを導入部として話された。
次いでノンフィクション作家であり鳥飼史研究家でもある細川博昭先生が、「滝澤馬琴から見えてくる大江戸鳥飼ブーム」と題して、愛鳥家であった滝澤馬琴の日記や家記をもとに江戸の鳥ブームを当時の鳥屋の様子などをまじえて解析。「幕末には60件もの鳥屋が江戸市中にあったことから、かなりの需要があり流通があったことが想像できる。幕府が発行する鑑札が必要な商売でもあった。関西地方に鳥屋が数多くあったという記録見つからず、野鳥の乱獲を防ぎ、鷹狩り用の鷹のエサや訓練のための小鳥を安定して供給する目的だったと考えられる。だが、それだたけでは江戸にこんなにも多くの鳥屋が繁盛し、多くの人が鳥を飼っていたということの説明がつかず、江戸には人々が鳥に親しむ何かがあったのではないかと思える」と発表。
次のパネリストは奥野先生と同じく関西学院大学の文学部教授である森田雅也先生でタイトルは「歌舞伎・文楽にみる動物と人間との関係」。多くのスライドで歌舞伎や文楽の様子を見せながら、「演劇の世界には数多くの動物が登場するが、同じ演題でも上方と江戸では、その表現法に違いがある。上方では虎に人気があり、虎退治の場に人気があった。一方、江戸では猪に人気があるようで存在感のある演出をする。またそれらの演出方法を比べると、江戸の演出には外連味(けれんみ・俗受けをねらったはったり)があるのが特徴といえるだろう」と話された。
最後に大阪芸術大学教授の若生謙二先生が「大阪の孔雀茶屋と江戸の花鳥茶屋」というタイトルで講演。上方にあった孔雀茶屋と江戸にあった花鳥茶屋を比較検討。「どちらも定着型の見世物園地であるが、大阪の孔雀茶屋は鳥をめでながらお茶を飲むという雰囲気、江戸の花鳥茶屋はもっとくだけた雰囲気で向上もあり酒も出していた。大阪の孔雀茶屋が江戸に渡って形を変えたのかもしれない。そこに上方と江戸の庶民の感覚の違いがある。森田先生の言う外連味が江戸の花鳥茶屋には確かにある。また、皆さんの講演を聞いて、江戸時代の動物観のキーワードは鳥かもしれないと改めて感じる」と話された。
その後の総合討論では、武士の支配が強かった江戸の庶民の娯楽感覚、より自由な雰囲気のあった上方での娯楽感覚などについて活発な論議が行なわれた。会場からも多くの意見が出て、大いに盛り上がった。4人の講演が見事にかみあった、素晴らしいシンポジウムになったと思う。(編集委員・加藤由子)
 
ヒトと動物の関係学会
天王寺動物園見学ツアー
日時: 2006年12月2日(日)13:00〜
会場: 天王寺公園入り口集合
見学の様子1
見学の様子2
 関西シンポジウム開催の前日、大阪・天王寺動物園の見学ツアーが行なわれた。平成7年に始まった「生態的展示を基本理念としたZOO21計画」のもと、ついに今年9月に完成したアフリカサバンナゾーン、そして去年にオープンされた東南アジアの熱帯雨林を再現したゾウ舎が主な見学ポイント。あいにくの雨のせいか参加人数は7人のみだったが、皆それぞれに楽しみながら熱心に見学。飼育課の鈴木氏が園長に代わって説明をしてくれた。
サバンナゾーンはナショナルパークを再現するというコンセプトのもと、“ンザビ国立公園”という架空の国立公園を想定している。動物とともにその生息地のランドスケープ(景観)を再現してあり、アフリカの国立公園を歩いているような気分にさせるというのが基本理念。動物園の「生態展示」という言葉は過去にもあったが、それらとは根本的に違うものがある。天王寺動物園は、都会の繁華街のド真ん中にあり、園内に高速道路は走っているわ、まわりには高いビルが乱立するわというユニークな立地だが、植生と目線の工夫で、それらが見えなくなるという仕掛けがなされている。展望を楽しむだけでなく、ビューイングシェルターからはガラス越しに動物を間近で見ることもできる。
建設にかかわった当学会の編集委員長である若生氏も補足説明をしてくれたが、参加者たちは水中で“口ゲンカ”をしているカバやガラス越しの目の前で顔を洗うライオンに夢中になってしまい、しまいに皆バラバラで勝手に動きまわっていたというのが現状。それでも誰も迷子にならなかったのは大人ゆえの分別か。
天王寺動物園にはまだ旧式の動物舎も残っているが、それらは徐々に姿を消していく予定だという。ツアーに参加できなかった人は、ぜひ時間を作って行って見て欲しい。1時に出発した我々が園を出たのは4時半だったという事実が、楽しい見学会だったという何よりの証拠。歩き疲れたが、「あ〜、おもしろかった!」が最大の感想。(編集委員・加藤由子)


 
     
About Us | Privacy Policy | Contact Us | ©2008 Human Animal Relations (HARs)